ヘルメット治療

ヘルメット治療を寝る時に行うのはなぜ?押さえておきたいポイント

 

更新日:2025年04月18日


ヘルメット治療は、装着する時間が長いほど、治療効果を高めることができるため、寝る時も推奨されています。ご両親からすると、「寝る時までヘルメットを装着して寝苦しくない?」「夜間はずっとは見ていてあげられないから心配」といった疑問や不安を抱くのではないでしょうか。そこで今回は、寝る時にヘルメット治療を行う必要性や、治療の進め方、治療環境で工夫・注意したい点まで解説します。

ヘルメット治療の必要性とその効果

まずは、なぜ赤ちゃんの時期にヘルメット治療を必要とするのかを確認していきましょう。

ヘルメット治療の役割とは?

ヘルメット治療の役割は、赤ちゃんの頭に生じたゆがみを改善していくことです。赤ちゃんの頭の骨はやわらかく、ちょっとした動作でゆがんでしまいます。だからこそ、頭蓋骨がやわらかい時期に治療を行い、成長するにつれて固くなる前にゆがみを整えることが大切です。
大人からすると「頭をずっと覆われていると辛そう」と思うかもしれませんが、期間限定のことだと割り切ることも必要です。
ただし、ヘルメット治療は頭にゆがみのある赤ちゃんすべてに必要なわけではありません。治療の必要性は、医師による診察・説明をもとに保護者の方の希望と合わせて判断していくケースが多いでしょう。

治療をしなかった場合の後悔とは

赤ちゃんの頭のゆがみは、症状の程度によっては治療を必要としない場合もあります。軽度の場合は成長・発達によってゆがみが目立たなくなりますが、重度の場合は自然には治りません。そのため、治療をしなければ頭のゆがみが残ったままに。斜視や視覚障害、嚙み合わせの悪さ、頭痛・肩腰こりなど健康上に影響が及び、後悔につながってしまうでしょう。

赤ちゃんの成長と頭蓋形状の関係

赤ちゃんの頭の骨である頭蓋骨は、脳の成長に合わせて大きくなっていけるよう、やわらかい状態で生まれてきます。生後6ヶ月前後から次第に固くなり、1歳を迎える頃には頭のかたちがほぼ定まります。そのため、ゆがみがある場合はこの時期までに、適切な治療を始めることが推奨されているのです。


赤ちゃんの向き癖とその影響

ここでは、赤ちゃんの頭のかたちに影響する向き癖について解説していきます。

向き癖がもたらす頭蓋変形の原因

先ほど、赤ちゃんの頭の骨はやわらかく、ちょっとした動作でゆがんでしまうと述べました。このゆがみの原因の1つに向き癖があり、寝る時の圧力によって頭蓋の変形(ゆがみ)が生じます。

向き癖による頭のゆがみには次の3つがあります。

・「斜頭症(しゃとうしょう)」
頭を真上から見た時に左右非対称の状態。寝る時の向きが偏っていると斜頭症になりやすくなります。

・「短頭症(たんとうしょう)」
いわゆる「絶壁」といわれる状態。仰向けに寝かせていると短頭症につながる可能性があります。

・「長頭症(ちょうとうしょう)」
「短頭症」とは逆で、後頭部のあたりが出ている状態。横向きで寝かせていると長頭症の原因となる場合はあります。

向きの見直しとストレッチの方法

頭のかたちが気になるなと思ったら、まずは寝る向きを見直してみましょう。赤ちゃんが自分で頭の位置を変えられない低月齢の頃は、向けたい方向に“赤ちゃんが好みそうな景色”を用意して寝かすと効果的。日が差している窓や、メリーといったおもちゃを赤ちゃんは好みます。

頭を一定方向で寝かせないために「タミータイム」と呼ばれるストレッチを取り入れるのもおすすめです。大人の身体の上や床の上に赤ちゃんをうつ伏せで寝かせるという簡単な方法であるため、日常生活にも取り入れやすい対策です。1ヶ月健診終了後からスタートでき、最初は10分以内の短時間で試します。慣れてきたら20分ほど続けられると良いでしょう。

気軽にできる家庭でのケア方法

気軽に向き癖をケアする方法として、タオルを使う方法があります。ロール状に巻いたバスタオルを、赤ちゃんを向かせたい方向と逆の背中~お尻に添えるだけ。ほかにも、授乳の際に赤ちゃんの頭が同じ方向ばかり向かないよう、頭の向きをこまめに変えるといった方法もあります。

ヘルメット治療中の赤ちゃんが寝る時の注意点

続いては、寝る時にヘルメット治療を行う際の注意点を確認しましょう。

ヘルメットの装着時間と睡眠の関係

ヘルメット治療の期間中は、1日23時間のヘルメット装着が目標となります。汗を拭く、お風呂に入るといった時間以外は、寝る時も含めて常時ヘルメットをしておくイメージです。これは、装着時間が長いほどゆがみがある部分(平坦部分)の成長が促され、高い治療効果が期待できるためです。

赤ちゃんの寝かしつけにおける位置の工夫

ヘルメット治療中の赤ちゃんの寝かしつけで、向きを気にされる保護者の方がいますが、どの方向でも問題ありません。治療用のヘルメットは、睡眠時にどの向きになっても成長させたい方向に空間が生まれるよう作られています。赤ちゃんが寝やすいように寝かしつけてあげましょう。

寝る時のヘルメットの外し方とタイミング

1日23時間のヘルメット装着時間は、最終的な目標時間です。ヘルメット治療は短時間の装着からスタートし、休憩時間を挟みながら徐々に時間を延ばしていきます。初めの頃は、昼寝や夜に寝る時の装着はありません。夜間の装着も始まったら、寝る前に装着し、ぐっすり眠った夜中に外してあげると良いでしょう。慣れてきたら、夜通し装着するようにしていきます。

ヘルメット治療中の睡眠環境の工夫

ヘルメット治療中は、睡眠環境を意識して整えてあげることも大切です。

快適な睡眠を促すための環境作り

赤ちゃんの睡眠環境でまず大事なのは、部屋の温度です。夏は25~28℃、冬は20~25℃が赤ちゃんが快適に眠れる室温といわれています。これを目安に温度を調整しましょう。この際、湿度にも注意を払うこともポイントです。50~60%をキープできるよう、加湿器などを適宜使って調整しましょう。
なお、ヘルメット治療を始めた頃は汗をかきやすいため、気温や湿度は目安とし、赤ちゃんの様子を見て調整してください。ヘルメットを外した際に汗を拭いてあげると、肌トラブルの予防につながります。汗かきは、1週間ほどすると赤ちゃん自身が適応して気にならなくなってくるでしょう。

昼寝と夜の睡眠で気を付ける点

ヘルメット治療を行う時期は生後2歳未満なので、赤ちゃんは日中にも睡眠が欠かせません。ちょっとした刺激で起きてしまうので、寝る際は昼夜問わず部屋は暗くして、光の刺激がない環境でぐっすりと眠れるようにします。昼寝が長すぎると夜の睡眠に影響を与えてしまうため、3時間以上の昼寝は起こしてあげることも覚えておきましょう。

周囲の騒音がヘルメット治療に与える影響

ヘルメット治療を初めてすぐの頃は、ヘルメットの装着に違和感を抱き、入眠できない赤ちゃんもいます。そんな中、せっかくヘルメットを装着して寝たのに周囲の騒音で起きてしまっては、赤ちゃんだけでなく保護者にも負担がかかります。
それでは無音が良いのかというと、実は、赤ちゃんが眠る際には「ある程度は音があったほうが良い」といわれています。ホワイトノイズという環境音やオルゴールの曲をBGMにすると落ち着いて眠りにつく赤ちゃんは多いよう。赤ちゃんの様子を見ながらぐっすりと眠れる環境を整え、ヘルメット装着の時間も延ばしていきましょう。

ヘルメット治療の進め方と流れ

ここでは、ヘルメット治療の進め方と流れを解説します。

予約の流れと初診時の確認事項

赤ちゃんの頭のかたちを専門的に診てくれる医療機関を探すことからスタート。治療に使われる“矯正ヘルメット”のメーカーサイトには、専門医療機関が掲載されています。近くで受診できる施設を探し、予約をしましょう。小児科などから、赤ちゃんの頭のかたちの診療に対応している外来や脳神経外科を紹介してもらう方法もあります。
初診時には、問診やレントゲン、3Dスキャン、CT検査などを行いゆがみの原因と程度を計測・確認します。

医師による測定と診断のポイント

ヘルメット治療が適応になるかどうかの診断は、いくつかのチェックポイントをもとに医師によって行われます。

治療期間中の定期受診の重要性

ヘルメット治療を行う場合、治療期間中は定期的に受診が必要です。月1回の間隔で受診し、
オーダーメイドで作成したヘルメットの調整と経過観察を行います。この際、頭蓋骨のつなぎ目「大泉門」の閉じ具合、頭蓋骨の硬さなどがチェックされます。

ヘルメット治療と医療機関の選び方

ヘルメット治療を行える医療機関はどこにでもあるわけではなく、限定されています。クリニックの候補が決まり、その医療機関で実際に診察してもらう際は、信頼できるか次のポイントを確認してみましょう。

・ゆがみの原因を向き癖と決めつけず、病気によるものか鑑別できる(頭蓋骨縫合早期癒合症など)
・検査結果などの客観的データで治療の必要性を判断できる
定期健診を行い、医師が治療の効果などを確認している
・赤ちゃんの頭の成長に配慮した安心・安全なヘルメットを採用している

<日本で取り扱いのある矯正ヘルメット3社>
・「クルムフィット」
日本生まれのヘルメット。日本人の頭、日本の気候に合わせて作られている。
・「スターバンド」
アメリカ生まれのヘルメット。世界各国で採用されており、デザインも豊富。
・「ミシガン頭蓋形状矯正ヘルメット」
アメリカ生まれのヘルメット。ミシガン大学で確立された製品で、日本の国立病院でも採用実績がある。

まとめ|赤ちゃんの頭のかたちに悩んだらまず受診!

赤ちゃんの頭は1歳頃には硬くなり、かたちがほぼ決まってしまうもの。頭のかたちに少しでも悩み・不安がある場合は早めに専門機関を受診することで治療の判断につながります。