子育て・育児

クーイングとは?始まる時期や喃語との違いを解説|言葉の習得を促すポイントも

 

更新日:2025年09月08日

クーイングとは、生後13カ月ごろの赤ちゃんに見られる「あー」「うー」などの発声のこと。喃語とは異なり、舌や唇を使わずに発せられる点が特徴です。クーイングの有無など、自身の子育てに自信が持てず、SNSで情報を集めているママ・パパは多いでしょう。今回は、クーイングの基礎知識や成長のサインとして知っておきたいポイントを解説。言葉の習得を促すコツと併せて、ぜひご一読ください。

クーイングとは?

まずは、クーイングの基礎知識として、意味や始まる時期、喃語との違いについて見ていきましょう。

クーイングの意味と重要性

クーイングとは、「あー」「うー」といった赤ちゃんが発する音声を指します。舌や唇を使わずに発せられる、母音を中心とした一音節であることが特徴です。赤ちゃんの発する声が、鳩の鳴き声に似ていることから、英語表記「coo(クー)」をもとにクーイングと呼ばれるようになりました。

クーイングには、声を出すための器官が発達してきたことを示す、重要な役割があります。赤ちゃんがゆったりとした気分でくつろいでいるときに、聞かれることも多いでしょう。

出典:大分大学教育学部 出典:近畿大学九州短期大学図書館


赤ちゃんのクーイングが始まる時期

クーイングは、早い場合には生後1カ月ごろから始まります。生後23カ月ごろを目安に、クーイングが頻繁に聞かれるようになるでしょう。

クーイングが始まるまでの赤ちゃんの発声は、オムツを変えてほしいときや空腹時などの泣き声です。そのため、クーイングは赤ちゃんの発声における大きな変化といえます。

赤ちゃんは、生後数日からママなど身近な人の声を聞き分けられるようになるといわれており、クーイングが始まる時期は、発声やコミュニケーションを学び始めるタイミングでもあるのです。

出典:東北福祉大学 出典:京都大学学術情報リポジトリ KURENAI
出典:大分大学教育学部
出典:ドクターサーチ みやぎ


クーイングと喃語(なんご)の違い

クーイングと似た意味合いの「喃語」という言葉を耳にしたことがあるママ・パパは多いでしょう。中には「クーイングと喃語はどう違うの?」と疑問をお持ちの方もいるかもしれません。ここで、クーイングと喃語の違いを表にまとめました。


クーイング

喃語

音声

・「あー」「うー」など

・母音を主とする

・「ばばば」「ばぶばぶ」など

・子音と母音を組み合わせる

始まる時期

生後1カ月ごろ

生後46カ月ごろ

発声の仕組み

舌や唇を使用しない発声

舌や唇を使う複雑な発声

意思の有無

赤ちゃんの意思によらない

赤ちゃんの意思で発せられる

喃語はクーイングの後に始まる発声で、母音だけでなく子音も含む音の組み合わせが特徴です。感情を表現するために喃語を発している場合もあるでしょう。クーイングから喃語への変化は、赤ちゃんの成長を示すサインです。

出典:東北福祉大学 出典:大分大学教育学部 出典:近畿大学九州短期大学図書館

赤ちゃんの成長とクーイングの関係

ここでは、赤ちゃんの成長とクーイングの関係について、深掘りしていきましょう。


発達段階におけるクーイング

クーイングは、下あごや喉の筋肉の発達がきっかけで生じます。また、クーイングを経て舌が上手く使えるように変化していくのです。つまり、クーイングが見られる時期は、発声に必要な口腔内の機能が発達する段階ととらえられるでしょう。またクーイングは、聴覚や手足を動かす運動機能などが発達してきたサインともいえます。

出典:東京女子大学学術情報リポジトリ 出典:植草学園短期大学


クーイングの発声と個人差

「あー」「うー」といった単一の音を伸ばすのが、クーイングの基本的な発声です。「あーぅ」と母音が2音続く場合や「くー」のように子音を発することもあるでしょう。

赤ちゃんがいつからクーイングを始めるか、どのような発声をするかには、個人差があります。クーイングに関する赤ちゃんのペースはさまざま。クーイングを行う期間が長い場合もあれば、すぐに喃語を話すようになる赤ちゃんもいます。クーイングのタイミングにより、一喜一憂する必要はないと考えましょう。


クーイングを通じたコミュニケーションの重要性

クーイングを通して、親子のコミュニケーションを取ることは重要です。赤ちゃんが「あー」と発したら「あーあーだね」といった具合に声色を真似てみてください。赤ちゃんが会話を楽しむことが、成長につながります。クーイングは赤ちゃんの機嫌が良いタイミングで発せられることが多いため、大人が積極的に反応すれば、子どもにとってより楽しい時間になるでしょう。

また乳児期は、ママを主とした身近な大人が「マザリーズ」と呼ばれる独特の話し方をすることが明らかになっています。大きな抑揚をつけながら音程の高い声でゆったり話すのが、マザリーズの特徴。クーイングとマザリーズを介した親子のコミュニケーションから、赤ちゃんの言葉への興味が広がっていくのです。

出典:帝京短期大学 出典:甲子園短期大学

クーイングの原因と背景

続いて、クーイングが生じる原因と背景について見ていきましょう。


新生児のクーイングはなぜ起こる?

生まれてから日が浅い赤ちゃんは、口腔内が狭く、そのほとんどを舌が占めている状態です。また、口頭の位置が高く、口腔と鼻腔が分離されていません。そのため声帯の振動を共鳴させることができず、言語音の発声にならない声で泣くのです。

生後数カ月が経つと、舌が口腔と鼻腔の境界をなす口蓋に近づく、触れるといった動きが見られるように。さまざまな長さ・高さの発声が可能になり、クーイングにつながります。

出典:奈良学園大学学術リポジトリ


赤ちゃんの感情とクーイングの関係

クーイングは、赤ちゃんの機嫌が比較的良いときに発せられる声です。何かを感情的に伝えるというより、呼吸する際に自然にこぼれ出ている印象に近いかもしれません。音を楽しんでいる場合も考えられます。

一方で、クーイングに対してママやパパが反応すると、赤ちゃんもリアクションを返す場面が見られることも。コミュニケーションを楽しんでいる可能性もあるでしょう。


クーイングと発達障害・自閉症との関連性

自閉スペクトラム症(ASD)などの発達障害がある場合、クーイングや喃語が出ないことがあります。とくに自閉症は、その性質を特徴づけるもののひとつとして「社会コミュニケーションの障害」が挙げられます。そのため、クーイングが見られないと「発達に問題があるの?」と不安になるママ・パパは多いでしょう。

しかし、クーイングが見られないからといって、何かの発達障害を抱えているとは決していえません。クーイングの出るタイミングには個人差があり、発語が遅いだけという可能性も十分考えられます。

出典:帝京短期大学 出典:京都大学学術情報リポジトリ KURENAI
出典:子育てポケット

保護者が知っておくべきサイン

クーイングから発達に問題があるかどうかを判断するのは困難です。しかし、ママ・パパが知っておくべきサインがあります。


クーイングの反応とヒント

クーイング自体は赤ちゃんの意思によって出るものではないといわれています。ただし、意味のある言葉をまだ発せられない赤ちゃんも、視線や表情、身振りで次第に意思を示そうとするものです。

クーイングを通したコミュニケーションを重ねる中で、赤ちゃんの発声が親の声かけと交互になったり、喃語のように変化していったりといったことが見られるようになるでしょう。その結果、徐々に赤ちゃんの意思が声として現れ始めます。クーイングの反応の変化は、赤ちゃんの成長のサインといえるでしょう。


クーイングから見る身体のサイン

クーイングは必ず生じるものではありません。しかし、クーイングおよび喃語への変化が見られるかどうかが、赤ちゃんの身体ついて知らせるサインになることも。クーイングが見られない、なかなか喃語へ変化しないといった場合には、以下の可能性があるかもしれません。

・聴覚の問題
・身体的な成長の遅れ
・発達の特性

聴覚に問題がある場合、自分や周りの声を聞き取れないことから、クーイングから喃語への変化が生じにくいといわれています。

また、クーイングは口腔器官の発達に伴い生じるものです。加えて、舌の可動範囲の拡大や咽頭部の発達により、クーイングから喃語へ変化していきます。クーイングや喃語への移行が見られない場合、口腔器官の発達の遅れが生じている可能性もゼロではありません。

さらに、自閉症など発達の特性を持つ場合、発語がない、または遅いといったこともあるでしょう。

出典:奈良学園大学学術リポジトリ 出典:田辺市 出典:植草学園短期大学 出典:認知神経科学会


育児における自信を持つために

クーイングの有無に関して、むやみに心配する必要はないとはいえ、赤ちゃんの成長に不安を抱くのは当然です。赤ちゃんの発達には個人差があるため、クーイングが見られない、または喃語へ変化しないといった状況でも、すぐに病院で検査を受ける必要はないでしょう。発声がなくても、赤ちゃんがママ・パパの声に反応していることがわかれば、大きな問題はありません。発声の有無や言葉の理解といった点に引き続き注目しながら、様子を見ましょう。     

おしゃべりへ向かうクーイングの役割

ここからは、おしゃべりを始めるきっかけともいえるクーイングの役割や、言葉の習得をサポートする方法について紹介します。


クーイングから発語へ移行する流れ

早ければ生後1カ月ごろから始まるクーイング。一般的には生後4カ月以降から喃語に移行していきます。「ばばば」のように子音または母音を連続で発したり「ばぶばぶ」のように異なる音節を組み合わせたりと、さまざまな喃語で活発に話すようになる赤ちゃんもいるでしょう。

その後、生後10カ月ごろには「あい!」「ねー」など、周囲の発声を反復するような言葉のやりとりを交わせるように。1歳ごろには、ごはんを「まんま」、車を「ぶっぶー」と呼ぶなど、意味のある単語を発する場合も多く見られるようになります

クーイングは、おしゃべりが上手になるカギといえるでしょう。

出典:東京福祉大学 出典:奈良学園大学学術リポジトリ


絵本を通じた言語習得の促進

クーイングから始まる言語の発達は、ママ・パパとのコミュニケーションによって、より促進されます。その点で、赤ちゃんの言語習得に良い影響をもたらすとされているのが、絵本の読み聞かせです。

例えば「風がビュービュー吹く」「雨がザーザー降る」といった擬音語「オノマトペ」がふんだんに使われた絵本を選ぶと良いでしょう。日本語は「オノマトペ」が豊富なため、絵本の読み聞かせは、赤ちゃんの言葉に対する感覚を豊かにするのにうってつけです。


言葉の発達を支援する方法

赤ちゃんの言葉の発達を促すには、親子の会話や絵本の読み聞かせを介して「言葉のシャワー」を浴びさせることが大切。ただし、テレビ番組やDVDを用いた一方的な語りかけの多用は控えましょう。また、言葉はもちろん、身ぶり手ぶりによるコミュニケーションも重要です。

加えて、赤ちゃんから幼児に成長していく過程において、意思疎通の楽しさを知る経験が発語を促します。上手く言葉にできなくても、安心して話せる環境づくりを心がけてください。

まとめ|クーイングを介したコミュニケーションで赤ちゃんの成長を促そう

クーイングは、言葉の発達につながる大切なサインです。クーイングが見られた際は、ママやパパが積極的に反応を示してあげましょう。絵本の読み聞かせも、言葉の習得を促す有効な手段です。クーイングが見られないからといってすぐに病院を受診する必要はありません。ただし、おかしいと思うことがあれば、専門機関に相談してください。親子のコミュニケーションを通じて、お子さまの健やかな成長をサポートしましょう。