子育て・育児

揺さぶられっ子症候群とは?原因・症状・予防法をわかりやすく解説

 

更新日:2025年09月08日

揺さぶられっ子症候群とは、強い揺さぶりにより、赤ちゃんの脳や神経に深刻なダメージを与える頭部損傷のことです。特に新生児~生後6ヶ月ごろまではリスクが高く、どこのご家庭でも起こる可能性があります。「普段のあやし方で大丈夫かな?」「知識がなくて不安」と、心配なママパパもいらっしゃるのではないでしょうか。

そこで今回は、揺さぶられっ子症候群の症状や原因、予防法などを詳しくご紹介。ママパパの育児不安を和らげる手助けとなれば幸いです。

揺さぶられっ子症候群とは?

耳にしたことはあっても詳しくは知らない「揺さぶられっ子症候群」。いったい、どのような症候群なのか解説します。


揺さぶられっ子症候群(SBS)の定義とは

揺さぶられっ子症候群(SBSShakenBabySyndrome)とは、乳幼児を強く揺さぶることによって脳や神経に障害が起こる状態を指します。外見上では傷がほとんど見られないため、見た目だけでは判断しにくいのが特徴です。別名「乳幼児揺さぶられ症候群」とも呼ばれ、首が座っていない新生児~生後6ヶ月頃の赤ちゃんに多く見られます。

赤ちゃんの脳は未発達で、頭蓋骨との間に隙間があるため、強く揺さぶると脳が頭蓋骨に衝突し、神経や血管が損傷してしまう可能性があります。その結果、学習障害や言語障害、発達の遅れなどの後遺症が残る場合もあるのです。

出典:厚生労働省 出典:済生会


赤ちゃんに起こりうる危険性

一般的に、日常的な育児の範囲であれば、揺さぶられっ子症候群が発生するリスクはほとんどありません。日常生活での車移動や、あやすために揺らす程度では、揺さぶられっ子症候群が発症する可能性は非常に低いとされています。危険性が高いのは、素早い過度な揺さぶりです。

揺さぶられっ子症候群は、育児中の予期せぬ事故やパパママの行動などがきっかけで起こるケースが報告されています。たとえば「ソファから転落した」「後ろに倒れて頭を打った」「泣き止まなくて、強くゆすってしまった」など、原因は多岐にわたります。

症状の理解と発症のタイミング

揺さぶられっ子症候群が起きた際、どのような症状がいつ頃あらわれるのでしょうか。初期症状や注意点、放置した場合の危険性について解説します。


初期症状の観察方法

揺さぶられっ子症候群では、脳細胞が損傷して酸素不足に陥り、次の症状が現れる可能性があります。


  • 呼吸困難
  • 意識がはっきりしない
  • 嘔吐
  • けいれん
  • 傾眠傾向(すぐに眠ってしまう状態)
  • 元気がない
  • 顔色が悪い
  • 食欲がない
  • 機嫌が悪くなる

もし頭部が強く揺さぶられた場合は、赤ちゃんの様子に変化や問題がないか、注意深く観察することが大切です。また、このような症状が出た場合は、すぐに病院を受診しましょう。

出典:済生会 出典:小児科学会


症状の出るタイミングと注意点

初期症状は、比較的早く現れる場合が多いといわれています。しかし、なかには発症後数ヶ月経ってから、手足の発達の遅れや首が座らないなどの異常に気づく場合もあります。見た目に傷がなく外見からは判断しにくいため、医師や親も見逃してしまうケースも。「この程度なら大丈夫だろう」と自己判断するのは危険です。日頃から赤ちゃんの様子をよく観察し、異変を感じたらすぐに病院を受診しましょう。


気づかない場合のリスクとは

見た目では判断が難しい揺さぶられっ子症候群。発症に気づかず放置してしまうと、次のようなリスクが考えられます。


  • 学習障害
  • 言語障害
  • 歩行困難
  • 失明

これらは一例にすぎず、急性の場合には意識障害や命にかかわる危険性も。ただし、もし頭部が揺さぶられた場合でも、日常通りミルクを飲んで元気に過ごしているのなら、必要以上に心配する必要はありません。

出典:厚生労働省

揺さぶられっ子症候群の原因

それでは、具体的にどのような揺さぶりが赤ちゃんに危険を及ぼすのでしょうか。次に、揺さぶられっ子症候群が起こる主な原因について、分かりやすく説明します。


小刻みに揺らす行為の危険性

赤ちゃんの脳はまだ発達途中で、頭も重く筋力も弱いため、自分でしっかりと頭を支えることができません。そのため、小刻みに強く揺さぶると、揺さぶられっ子症候群を発症させる恐れがあります。

具体的には、次のような揺さぶりは危険です。


  • 1秒間に23回ほどのスピードで強く揺さぶる
  • 2秒間で5回以上頭を揺らす

このような小刻みな強い揺さぶりは、脳が振動して神経や網膜の血管が損傷し、出血や命の危険を引き起こすリスクがあります。また、空中に投げるような「高い高い」、急に持ち上げて急に落とす動作を繰り返すなど、周囲から見て明らかに危険だと感じる揺らし方は、絶対にやめましょう。

出典:厚生労働省


家族の理解とサポートの重要性

揺さぶられっ子症候群の危険性は、ママやパパだけが知っていればいいものではありません。時には、良かれと思い行ったあやし方や些細な転落・転倒が原因となるケースもあります。祖父母や兄弟など、赤ちゃんに関わる家族全員が危険性を理解し、事故を防ぐためにサポートし合うことが大切です。

予防と対策

普通に子育てをしている場合、揺さぶられっ子症候群を必要以上に心配する必要はありません。しかし、万が一の事故を防ぎ、赤ちゃんを安全に守るためには、日頃からできる予防や対策を知っておくことが大切です。


育児における具体的対策

ここからは、日常的に取り入れられる具体的な対策方法をご紹介します。日々の中で意識することで、揺さぶられっ子症候群のリスクを減らすことができるかもしれません。


【リフレッシュタイムを設ける】

揺さぶられっ子症候群の原因のひとつとして、育児中のストレスから赤ちゃんに八つ当たりしてしまったという事例もあります。ストレスが限界に達する前に、意識してリフレッシュの時間をとることが大切です。

たとえば、次のような方法が考えられます。


  • 赤ちゃんを預けて一人でお出かけする
  • 家族に育児を手伝ってもらう
  • 友人と会話を楽しむ

こうした方法でリフレッシュすると、心に余裕が生まれ、穏やかに子育てを続けやすくなるでしょう。


【赤ちゃんを無理に泣き止ませない】

赤ちゃんを無理やり泣き止ませようとすると、その焦りが伝わってかえって泣き続けることがあります。赤ちゃんが泣く理由はさまざまで、空腹やおむつの交換だけでなく、理由が分からず機嫌が悪い場合も。赤ちゃんは、生後12ヶ月ごろに泣く量がピークに達し、この時期は不快な原因を取り除いても泣き止まない場合も少なくありません。そんなときは、イライラせず、赤ちゃんから少し距離を置き、深呼吸をして気持ちを落ち着けながら様子を見守りましょう。


【保健師や医師に相談する】

子育て中に感じるストレスやイライラは、保健師や医師に相談するのも一つの方法です。病院や子育て支援センター、地域の相談窓口では、子育ての悩みを安心して打ち明けられます。不安やストレスを一人で抱え込まず、話すことで気持ちが楽になるかもしれません。さらに、支援センターには保育士がいる場合もあり、相談中は子どもを見てもらえることもあります。気分転換をかねて利用してみるのも良いでしょう。


【転倒・転落を放置しない】

ベビーベッドから転落してしまったり、抱っこ中に落としてしまったりと育児中には想定していなかった事故が起こることもあります。その際には、「大丈夫だろう」と放置せず、まずはこども医療でんわ相談(#8000)を利用したり、かかりつけの小児科を受診したりしましょう。できるだけ早く行動することが大切です。


パパとママに必要な知識

赤ちゃんと関わる機会が最も多いママとパパが、揺さぶられっ子症候群の知識を持つことは、赤ちゃんを守る上で重要です。次の項目について正しい知識を持ち、家族全員で共有しましょう。


  • 危険な揺さぶり方
  • 赤ちゃんとの安全な過ごし方
  • 赤ちゃんが転倒・転落した際の対処方法

上記の知識は、実はパパママだけでなく、赤ちゃんに関わる家族全員が知っておくと安心です。パパママは知識を知るだけでなく、得た知識を家族に伝える役割も担います。赤ちゃんの健康、そして未来を守るためにも家族みんなで共有しましょう。

時に求められる支援と相談先

育児で困ったときは、一人で抱え込まず、育児相談や地域の支援を活用しましょう。専門家に相談することで、安心して子育てを続けられます。ここからは、相談の重要性とサポート活用法を解説します。


育児相談の重要性

育児のストレスを一人で抱え続けると、思わず子どもに当たってしまう危険性があります。児童虐待による死亡事例の多くは乳児期に発生しており、特に母親が一人で悩んでいる場合や、家庭環境や心身の状態が不安定な場合に発生しやすいとされています。

揺さぶられっ子症候群のリスクを減らすためにも、育児相談は非常に重要です。かかりつけの小児科や保健師など専門家に相談することで、赤ちゃんを安全に育てるポイントや不安や心配事を解消する方法が見つかるかもしれません。厚生労働省が2020年に実施した「子育てに関する悩みや不安の程度」に関する調査では、7割以上の人が何らかの悩みを抱えていることが分かっています。解決せずとも相談するだけでも心が軽くなり、子育てを前向きに楽しめるようになるかもしれません。


地域のサポートを活用する方法

育児に関するサポートは、自治体の保健センターや子育て支援窓口をはじめ、さまざまな場所で受けられます。主な支援先は次の通りです。


【ファミリーサポートセンター】

冠婚葬祭や用事、仕事や兄弟の行事の際に、子どもの一時預かりが利用できます。また、保育施設や習い事の送迎サービスを行っている施設もあるため、利用できるサービスの内容はお住まいの市区町村に確認すると安心です。


【訪問型支援】

訪問支援員が子育てに不安や負担を抱える家庭を訪問し、不安や悩みを聞いたり、家事や子育ての支援を行ったりするのが子育て世帯訪問支援事業です。対象者については様々な要件があるため、自分が利用できるかどうか、まずはお近くの保健センターや市役所に問い合わせてみましょう。


【地域の子育て支援センター】

子育て中の親子が気軽に集まれる場で、育児相談や交流ができます。授乳室やベビーベッド、遊具が整っており、子どもも安心して過ごせます。施設によっては子どもを預けて休憩・外出をできる場合もあります。


【市区町村の窓口】

市町村の支援課や福祉保健課では、育児に関する相談ができます。また、定期的に乳幼児健診や家庭訪問なども実施しており、子育てに役立つ情報提供やアドバイス、必要に応じたサポートを受けられる場所です。


【児童相談所虐待対応ダイヤル「189」】

「虐待かもしれない」「育児が辛くてつい子どもに手をあげてしまった」と感じたとき、相談できる電話番号です。全国共通で「189」にダイヤルすると、最寄りの児童相談所につながります。相談や通告は匿名で行えるため、相談内容や個人情報を心配する必要はありません。

このように、地域には育児を支えてくれるさまざまなサポートを受けられる場所があります。

神奈川県が2025年に実施した「港北区地域子育て支援拠点どろっぷ・どろっぷサテライト 利用者アンケート結果」では「一人でも孤独を感じにくい」「子どもが安心して遊べた」「知り合いがいなくても誰かしら話しかけてくれる」など、前向きな意見が多数ありました。

ひとりで悩まず、地域のサポートや施設を活用して、パパママの育児不安を減らしましょう。

まとめ|揺さぶられっ子症候群を知って未然に防ごう!

赤ちゃんと過ごす日々は、喜びや幸せにあふれていますが、ときには思うようにいかず、ストレスを感じる場面もあるでしょう。必要に応じて地域のサポートを活用したり、リフレッシュタイムを設けたり、自分なりの工夫をしながら、一人で抱え込まないことが大切です。まずは、揺さぶられっ子症候群について正しい知識を知ることが大切です。日頃から子どもの様子に目を配り、けがや気になる症状が見られたときには早めに専門機関に相談しましょう。