頭のゆがみと発育
2020年6月5日
自分で寝返りが打てるようになるなど日に日に活発になってくる生後5ヶ月の赤ちゃん。成長が楽しみな一方で「以前から気になっている頭のゆがみが進んでいないだろうか?」と心配になる時期でもあります。生後5ヶ月の赤ちゃんの頭のゆがみが気になる場合、保護者の方はどう対処すればよいのでしょうか。今回は生後5ヶ月の赤ちゃんの頭のゆがみについて見ていきましょう。
生後5ヶ月は赤ちゃんの足の力がついてきて、よく寝返りを打ったり自分の足を抱えて手で持ったりといったしぐさができる時期。保護者の方の支えがあればおすわりができることもあります。
生後5ヶ月頃には以前から気になっていた頭のゆがみが気にならなくなってくるケースもありますが、中にはゆがみがだんだん強くなっているように感じられるケースもあります。成長にともなって赤ちゃんの頭のゆがみが気になる場合には、小児科の医師に相談して頭のゆがみが強くなっている原因を探してもらいましょう。
頭のゆがみが日に日に大きくなっているように感じられる原因として、大きく2つの原因が考えられます。
頭のゆがみの原因として一般的なものは寝癖によるものです。寝癖とは寝ている姿勢が常に一定である状態を指し、それによって頭がいつも同じ方向を向くことで、赤ちゃんの頭のゆがみが進行する場合があります。仰向けで寝かせていると短頭症(いわゆる「絶壁」)、横向きで寝かせている場合には長頭症になりやすいと言われています。
生後5ヶ月になると寝返りを打てるようになるものの、それまでにすでに頭のゆがみがある程度進んでいると頭の向きを変えにくくなり、なかなか自分で寝返りを打てないケースも見られます。
病気が頭のゆがみを引き起こしているケースもあります。赤ちゃんの頭のゆがみの原因となる病気としてあげられるのが頭蓋骨縫合早期癒合症(ずがいこつほうごうそうきゆごうしょう)です。
頭蓋骨縫合早期癒合症は、出生時はバラバラのピースに分かれている頭蓋骨が、赤ちゃんの成長にしたがってお互いにくっついてひとつになるはずなのに、なんらかの理由により通常よりも早く閉じてしまう病気です。早く閉じてしまう部分ができてしまうことから頭の形がいびつとなり、成長と同時にゆがみも大きくなっていきます。
頭蓋骨縫合早期癒合症はそのままにしておくと赤ちゃんの脳の発達に影響を及ぼすことから、早めに病気を発見し、治療を行うことが大切です。
生後5ヶ月での頭のゆがみに対する治療としては、主に2つの方法が考えられます。体位変換とヘルメット治療です。
体位変換は、寝る向きや抱っこの向きにいくつかパターンを持たせて、頭の同じ面がベッドや床に着かないようにする生活上の工夫のひとつです。赤ちゃんが起きている時間にうつぶせ、横向き、腹ばい、縦抱きなどさまざまな体位をとらせることで、頭や体の方向の癖(向き癖)の改善を試みます。
生後5ヶ月で寝返りが打てる赤ちゃんであれば、おもちゃで興味をひくことで自発的に寝返りを促すのもよい方法です。
ただし、頭のゆがみがすでに進行している場合には、体位変換では期待した効果を得られないこともあります。その場合には、次に説明するヘルメット治療を検討します。
ヘルメット治療は赤ちゃんの頭のゆがみの改善を図る治療のひとつです。赤ちゃんの頭の形に合わせた専用のヘルメットを長時間かぶせます。これにより、頭を守りながら頭のへこんでいる部分の成長を促して正常な頭の形へと近づけていきます。
専門の医師のもとでヘルメット治療を行うことがよいと判断されれば、治療を受けられます。生後5ヶ月はヘルメット治療を始めるのに適した時期とされているので、ヘルメット治療を希望する場合には、時期を逃さないようなるべく早く病院へお問い合わせのうえ受診することをおすすめします。ヘルメット治療を行う病院は、治療用ヘルメットのメーカーホームページから探すか、かかりつけの小児科医から紹介してもらうとスムーズです。
ただし、繰り返すように治療を受けられるかどうかは、頭のゆがみの程度や首のすわり具合といった赤ちゃんの状態によって最終的に判断されます。また、ヘルメット治療は保険適用外の治療です。治療を受ける病院や使用するヘルメットによって、同じヘルメット治療でも費用に差が出てくるため、費用については受診予定の病院に確認しましょう。
受診前にはいつから頭のゆがみが気になるようになったか、頭のゆがみのほかに気になる症状がないかなどのメモを用意しておくと安心です。
生後5ヶ月頃は首がすわるようになり、ヘルメット治療を受けられるなど頭のゆがみの治療を始めるのに適している時期です。また、軽度の頭のゆがみであればヘルメット治療を受けなくても体位変換によって徐々に頭のゆがみが気にならなくなってくることもあります。
赤ちゃんの頭は月齢が進むごとに硬さが増し、頭の形が固定されていきます。生後5ヶ月のまだ頭がやわらかいうちに早めに治療を始めることで、頭のゆがみの改善の可能性が期待できるのです。
ですから、頭のゆがみが気になったら放置せずに早めに小児科の医師に相談しましょう。まずはかかりつけの医師に相談することで、早めに赤ちゃんの頭のゆがみに対処できます。
日本赤十字社医療センター小児外科部長、東京大学小児外科教授を歴任後、東京西徳洲会病院で総長を務める。同院を退任後、現在はメディカルノート社外取締役及びジャパン・メディカル・カンパニー社外取締役。これからの医療には産業界との連携が欠かせないという考えのもと、医療人として・企業人として、双方の視点から医療の進歩に貢献している。
日本赤十字社医療センター小児外科部長、東京大学小児外科教授を歴任後、東京西徳洲会病院で総長を務める。同院を退任後、現在はメディカルノート社外取締役及びジャパン・メディカル・カンパニー社外取締役。これからの医療には産業界との連携が欠かせないという考えのもと、医療人として・企業人として、双方の視点から医療の進歩に貢献している。
この相談室は、医療機器メーカである株式会社ジャパン・メディカル・カンパニーが運営。赤ちゃんの頭の形に関する疑問・質問を受けつけています。
向き癖やヘルメット治療について。お悩みになっていること、もっと知りたいことなど、ぜひお気軽にご相談ください。
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