頭のゆがみ

生後2ヶ月の頭のかたち|特徴や頭蓋変形の原因、対策・治療法をご紹介


赤ちゃんが生まれ、沐浴や授乳、抱っこなどのお世話をしているときに「頭のかたちがゆがんでいるような気がする…」と感じたことはありませんか?

生まれたばかりの赤ちゃんの頭はとてもやわらかく、外からのちょっとした圧力で変形しやすいのが特徴です。

本記事では赤ちゃんの頭のかたちについて解説すると共に、頭のかたちのゆがみが気になった場合の対応を解説します。
自治医科大学とちぎ子ども医療センター 小児脳神経外科教授

五味 玲 先生

1978年、栃木県立宇都宮高等学校卒業。1984年、自治医科大学医学部卒業。1984年から1991年、栃木県の地域医療に従事。1995年、自治医科大学大学院卒業、医学博士号取得。自治医科大学脳神経外科助手。1996-1997年、米国ヒューストン、MD Anderson Cancer Center留学。2001年、自治医科大学脳神経外科講師。2008年、自治医科大学とちぎ子ども医療センター小児脳神経外科教授。現在に至る。日本小児神経外科学会理事、日本脳腫瘍病理学会評議員、日本小児血液がん学会評議員、日本脳神経外科学会代議員。専門は小児脳神経外科、小児脳腫瘍、神経内視鏡。

生後2ヶ月頃の赤ちゃんの頭は変形しやすい


赤ちゃんの頭のかたちはとても変形しやすく、このことを専門用語で頭蓋変形と呼びます。

生まれて間もない赤ちゃんの頭蓋骨は、下図のように、生後1歳半頃まではいくつかのパーツとして脳の表面に隙間を開けて並んでいます

身体が発達するにつれ、2歳頃になるとこの隙間が閉じてきて硬くなってきますが、それまでは外部からの圧力や衝撃などの刺激で簡単に変形しやすい状態となっているのです

 


1歳頃にはこの隙間が閉じてきますが、それまでは外部からの圧力や衝撃などの刺激で簡単に変形しやすい状態となっているのです。

赤ちゃんの頭のかたちがゆがむ原因としては、主に3つあります。
  • 向き癖がある
  • 吸引分娩で頭に圧がかかった
  • 頭蓋骨が変形する病気

向き癖がある


赤ちゃんが寝ているときや、抱っこするときに、いつも頭が同じ方向に向いてしまう「向き癖」があると、頭のかたちが変形しやすいといわれています。

特に生後2ヶ月頃までの赤ちゃんは寝返りを打つことができないため、同じ向きで長時間寝ることが多いでしょう。

このように同じ方向から圧力がかかり続けると、その部分が平らになり、頭のかたちのゆがみにつながります。

吸引分娩で頭に圧がかかった

出産時の環境によっても赤ちゃんの頭のかたちがゆがんでしまうことがあります。

例えば、難産の場合に行われる「吸引分娩」。吸引分娩とは、吸引カップを赤ちゃんの頭に吸いつけて引っ張り出す方法で、引っ張る際の圧力が赤ちゃんの頭のかたちのゆがみの原因となることがあります。

頭蓋骨が変形する病気


稀ではありますが、病気が原因で赤ちゃんの頭のかたちがゆがんでしまうことがあります。
頭蓋骨のつなぎ目が何らかの原因で早くつながってしまう「頭蓋骨縫合早期癒合症(ずがいこつほうごうそうきゆごうしょう)」という病気で、早期に治療を開始する必要があります。

頭の変形には3つの種類がある


赤ちゃんの頭のゆがみには、大きく3つの種類があります。
  • 頭のかたちが左右非対称な「斜頭症」
  • 横から見ると頭が長く見える「長頭症」
  • 後頭部が平らになっている「短頭症」

それぞれの特徴は次のとおりです。

頭のかたちが左右非対称な「斜頭症」



「斜頭症(しゃとうしょう)」は、赤ちゃんの頭を上から見たときに頭部の片側が斜めに平たくなっている状態のことをいいます。



ゆがみがひどくて重症になると、耳の位置が左右非対称になってしまったり、片側の頬が出っ張ったりと、頭のかたちだけでなく顔面にもゆがみが生じる可能性があります。

横から見ると頭が長く見える「長頭症」



「長頭症(ちょうとうしょう)」は、頭の前後幅が、横幅に比べて異常に長くなっている状態のことをいいます。

長時間、横向きで寝るなど、一定方向に圧力がかかり続けることで、その部分が平らになり、頭が細長くなってしまうのです。

例えば、NICU(新生児集中治療室)で治療を受けている赤ちゃんは、処置の関係上、横向きで寝かせることが多いので、長頭症になりやすいといわれています。

後頭部が平らになっている「短頭症」



「短頭症(たんとうしょう)」は、後頭部が丸みを帯びずに平らになっている状態のことをいいます。いわゆる「絶壁」と表現されることもあり、日本人に多くみられる頭のかたちです。
仰向けに寝る癖があると、短頭症になりやすいといわれています。

赤ちゃんの頭のかたちは自然には治らない


赤ちゃんの頭のかたちは「自然に治るよ」や「様子を見よう」といわれることがよくありますが、実際は自然に治ることはありません。

たしかに軽度のゆがみである場合は、成長とともにゆがみが目立たなくなることはあります。しかし、ゆがみが強い(重症度が高い)場合は自然に大きく改善に向かうことは期待できません

もし赤ちゃんの頭のかたちのゆがみが大きい場合は、医療機関に相談してみることをおすすめします。

頭のゆがみをそのままにしておくとどうなるの?


赤ちゃんの頭のゆがみをそのままにしていると、どのようなことが起こる可能性があるのか確認しておきましょう。

原因となっている病気を見落としてしまう可能性がある


稀ではありますが、頭蓋骨縫合早期癒合症という病気が原因で、赤ちゃんの頭のかたちがゆがむ場合があります。

生後間もない赤ちゃんの頭蓋骨はいくつかのパーツに分かれており、そのパーツごとのつなぎ目を頭蓋骨縫合と呼んでいますが、この頭蓋骨縫合が何らかの理由で早期にくっついてしまうのが、頭蓋骨縫合早期癒合症です。
頭蓋骨が部分的にくっついていると、脳の成長に合わせて頭蓋骨が正常に拡大していくことができません

それにより、成長すべき脳の発達が阻害されてしまう可能性があり、場合によっては早急に治療が必要なケースもあります。


 

1歳頃までに頭のかたちはほぼ決まる


生まれたばかりの赤ちゃんの頭蓋骨は、1歳半〜2歳頃には、いくつかのパーツに分かれた骨同士の隙間が徐々につながっていきます。

そのタイミングで、赤ちゃんの頭のかたちはほぼ決まることになります。

頭のかたちがゆがんだまま頭蓋骨がくっついてしまうと、その後でゆがみを改善させるのは大変難しくなります。

そのため、赤ちゃんの頭のかたちが気になる場合は、頭のかたちがほぼ決まってしまう1歳頃までに対策を取ることが重要なのです。

頭のかたちの予防法


一度変形してしまった赤ちゃんの頭のかたちは、残念ながら自然に大きく改善されることはありませんが、頭がやわらかいうちであれば、矯正することが可能です。

ご自宅でできる対策と、医療機関を頼って矯正する方法を紹介します。

体位変換で偏りを予防・改善


ご家庭でできる対策として、長時間同じ方向で寝かせないようにしたり、授乳時や抱っこの際にタオルや枕を上手に使って赤ちゃんの姿勢をサポートしてあげたりする「体位変換」という方法があります。

例えば、横向きで寝る癖がついている場合は、バスタオルを使って向き癖を改善する方法があります。

折りたたんでぐるぐる巻きにしたバスタオルを、赤ちゃんを向かせたい方向と反対側の背中から体の下へ入れ込み、赤ちゃんの寝る向きを支えてあげることで向き癖を修正します。

ただし、赤ちゃんに過度な負担がかからないよう、こまめに姿勢を変えてあげるようにしましょう。

ヘルメット治療を受診


頭のゆがみを改善する方法に、「ヘルメット治療」と呼ばれるものがあります。

ヘルメット治療は、矯正用ヘルメットをかぶることでやわらかい頭を保護しつつ、すでに変形して平らになってしまった部分の成長を促し、出っ張った部分を適度にヘルメットで加圧することで、自然な頭のかたちへと近づけていくものです。
適正開始時期:生後2〜6ヶ月

治療期間  :6ヶ月〜1年、平均6ヶ月

費用    :約40万円〜

ヘルメット治療は1990年代に米国で始まった治療方法であったため、以前は日本でも米国製のヘルメットを使って治療をしていました。

しかし、2010年頃からは日本の赤ちゃんに合わせて軽量化され、日本の高温多湿の気候に対応し、肌トラブルの回避や通気性を考慮して作成されたメイドインジャパンのヘルメットが登場しています。

赤ちゃんの頭のかたちを矯正するには、頭蓋骨がやわらかいうちに対応する必要があり、生後2~6ヶ月頃までにヘルメット治療を開始すると、効果が得られやすいとされています。

まとめ|ご家族だけで悩まず、医療機関に相談しましょう


我が子の頭のかたちが気になっても、周りの人から「考えすぎだよ」や「自然に治るよ」といわれ、3ヶ月目まで待ってみよう、と判断を先延ばしにしている方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、赤ちゃんの頭のゆがみは自然に大きく改善されることはなく、ゆがみが強くてヘルメット治療などで頭のかたちを矯正する場合には「生後6ヶ月まで」という適切な時期があります。

赤ちゃんの頭のかたちが少しでも気になるのであれば、不安を抱えたままにせずに、早めに医療機関へ相談しましょう。

早めに医療機関に相談することで、ゆがみの原因や対策についてのアドバイス、成長過程において必要に応じた治療提案を受けることができます。

ご家族だけで悩まずに医療機関へ相談し、ご家族・お子さまの将来の笑顔につなげていきましょう。

相談室に寄せられている声

2ヵ月のママ
2ヵ月のママ

1人目でまだまだ手探りの中、専門の方にご相談させていただければと思いましたが、ゆっくりお電話する時間が作れず申し訳ありません。詳細なご説明とご案内、ありがとうございます。 現在、複数の枕を使用する事で少しだけ改善されたように感じますが、今後のことを考え受診を検討したいと思います。 大変助かりました、ありがとうございました。

2ヵ月のママ
2ヵ月のママ

先日、病院に行き、診察してもらいました。 結果としては、生活の中で向き癖等を改善していくやり方で問題ないとのことで とても素敵な先生で、説明も丁寧でわかりやすくヘルメット治療等にはならないことが分かりほっとしております。 改めてご紹介くださりありがとうございました。 このようなサービスを運営してくださること、とても感謝しております。 また何かでご相談させていただくこともあるかも知れませんが、その時はまたよろしくお願いいたします。

3か月のママ
3か月のママ

本日はお電話いただきありがとうございました。主人と話しをして、やはり病院を受診し、専門医に重度なのか軽度なのかを判断してもらったほうが安心できる、という決断に至りました。ありがとうございました