赤ちゃんの頭のかたち相談室
Consult & Column
【医師監修】吸引分娩で頭のかたちが戻らないって本当?頭蓋変形の原因や対策を解説
更新日:2025年06月19日
無痛分娩の一種として行われる「吸引分娩」では、母親の胎内に引っかかっている赤ちゃんをバキュームカップで吸い出すことによって、頭のかたちにゆがみが生じることがあります。
▼吸引分娩とは?
「吸引分娩」とは、金属製またはシリコン製の丸いカップを赤ちゃんの頭に当てて、カップ内の空気を抜きながら、吸引力によって赤ちゃんを引き出す分娩方法です。吸引によって引き出すと同時に、お母さんのお腹を押すこともあります。また、鉗子といわれるトングのような器具で赤ちゃんの頭を挟んで引き出す方法を「鉗子分娩」といいます。 吸引分娩と鉗子分娩をまとめて「器械分娩」といい、何らかの理由で難産になった場合などに、いち早く分娩を進めるために選択される方法です。 吸引分娩が行われる条件を以下に示します。 ・破水をしている ・胎児が頭位である ・胎児の頭が一定以上下がっている ・帝王切開で対応できる環境下である ・胎児が成熟している |
親子無事の出産のために必要なものとはわかりつつ、赤ちゃんの頭蓋骨変形のリスクは気になってしまうものですよね。
そこで今回は、吸引分娩と赤ちゃんの頭のかたちの関係や、不安になったときの対処法について解説します。
まずはお気軽にご相談ください
「赤ちゃんの頭のかたち相談室窓口」では、赤ちゃんの頭のかたちにお悩みの保護者さまに向けて、無料相談を受け付けています。 相談室スタッフが頭のかたちについてのお悩みをお聞きし、ご希望があれば病院や専門医もご紹介しています。 不安なお気持ちやもっと知りたいことなど、ぜひお気軽にご連絡ください。どなたさまでもWebフォームから無料でご相談可能です。

1989年、東北大学医学部卒業、東北大学脳神経外科入局。1997年、東北大学医療技術短期大学講師。2000年、東北大学医学部脳神経外科講師。2002年、米国フェニックス、St. Joseph’s Hospital and Medical Center, Barrow Neurological Institute 臨床研修留学。2004年、ドイツ:ハノーバー、International Neuroscience Institute 脳神経外科 臨床研修留学。2004年〜2014年、東京慈恵医科大学脳神経外科講師。2014年〜脳神経外科・脳ドック、リハビリテーション病院、人間ドック・検診クリニック部長、院長、内科・整形外科クリニック、訪問診療、と総合診療を経験ののち、2018年より医療法人社団ICVS東京クリニック勤務。2019年、同クリニック院長・理事、現在に至る。
吸引分娩だと、どんな頭のかたちになりやすい?
吸引分娩は、胎児の頭に柔らかなカップを吸い当てて胎児を娩出する出産方法です。
そのため、赤ちゃんの頭のかたちの一部がたんこぶのように盛り上がったり(斜頭症)、全体的に伸びているようなかたち(長頭症)になったりする可能性が高くなります。
場合によっては、むくみや血腫ができてしまうこともあるそうです。
吸引分娩で変わった頭のかたちは元に戻る?
吸引分娩が原因で変わってしまった頭のかたちは、平均すると大体1〜3ヶ月で自然に治っていくことが多いとされています。
赤ちゃんの頭のゆがみの原因はさまざまで、吸引分娩だけとは限りません。お母さんのお腹の中にいるころから始まっている場合もあります。
なぜなら生まれる前の赤ちゃんは頭蓋骨が形成しきっておらず、頭の骨がバラバラで変形しやすいからです。おでこの上の前頭部中央部にある「大泉門(だいせんもん)」をはじめとし、骨と骨との間には隙間が空いています。
実際に赤ちゃんの頭に触るとプヨプヨとしている感覚をおぼえたことはありませんか?成長により、この骨の隙間は骨化して埋まっていきますが、赤ちゃんの頭のかたちは胎内にいるときは、まだ非常に柔らかい状態です。
つまり初産や多胎妊娠などで子宮の中が狭かったり、逆子で外部からの圧力を受けやすい環境にいたりすることで、お腹にいる段階でも頭のゆがみが生じるのはごく自然にあることです。
頭のかたちのゆがみの程度や、戻る度合いは、赤ちゃんによってまちまちですし、「吸引分娩をしたせいで我が子の頭のかたちがゆがんでしまった」と悩む必要はありません。
このように、ゆがみの原因や程度は赤ちゃんによって異なり、場合によっては病気が潜んでいることもあるので、少しでも違和感を感じたら、まずは頭のかたちの専門医(頭のかたち外来)に相談しましょう。
赤ちゃんの頭のかたちや治療法を熟知している専門家から、安心につながる情報やアドバイスをもらうことができますよ。
▼【医師監修】赤ちゃんの頭のかたちを綺麗にするには?対策や注意点を紹介
戻らないのは石灰化が原因?
ごく稀に、吸引分娩による刺激でできた頭の血腫が「石灰化」してしまうことがあります。
石灰化とは、吸引分娩で生じた頭皮の下の血腫がだんだん硬くなって、コブがそのまま残ってしまうことをいいます。
厄介なことに、石灰化まで進んでしまうと頭のかたちが歪んでしまう可能性が高くなり、外科的治療が必要になる場合もあります。
分娩による頭の血腫は、ふつうは数週間でなくなるものです。
時期が過ぎても頭の膨らみが消えない場合には、すぐに診察を受けるようにしましょう。
赤ちゃんの頭血腫について知っておくべきこと
出産における赤ちゃんのリスクとして「頭血腫」があります。ここからは、頭血腫の症状や原因、治療法について解説していきます。
頭血腫の原因と症状
「頭血腫」とは、頭蓋骨の骨膜下で起こる出血のことです。赤ちゃんが産道を通る間に頭が引っ張られたり、外から圧力がかかったりすることで起こり、発生頻度は全分娩の1~2%、吸引分娩の6%といわれています。
赤ちゃんの側頭部にできやすく、内出血により「るこぶ」のような状態になるのが特徴です。生まれてすぐは目立たないことが多く、生後半日~数日経って膨らんできます。
頭血腫の治療法と経過
頭血腫は、生後一週間頃から自然吸収が始まり、数週間~数カ月で硬化。徐々に小さくなっていきます。
頭血腫は自然に吸収されて治るため、基本的に治療を行わないケースがほとんどです。針を刺して血種を吸引するような外科的処置は、再出血や感染症のリスクがあるため禁止されています。
また頭血種は治癒経過の中で黄疸が見られる場合があります。黄疸とは、ビリルビンという物質が白目や皮膚に溜まることで、全身が黄色く見える症状のことです。頭血種が発生した際にも、赤血球が破壊されてビリルビンが産生し、黄疸になることも。また、生後2週間以上経過しても黄疸が続くと「遷延性(せんえんせい)黄疸」と判断され、長引くと神経系に障害が残る可能性もあります。深刻化すると治療が困難になるため、早い段階で光線療法や交換輸血で症状の悪化を予防します
頭血腫が赤ちゃんの成長に与える影響
頭血腫は、頭蓋骨の外側で起こる出血であるため、脳の発達に影響を及ぼすことはありません。
赤ちゃんによっては、血液が吸収されて骨化したこぶが2~3歳まで残ることがありますが、髪の毛で隠れるため徐々に目立たなくなるでしょう。
戻らないのは石灰化が原因?
ごく稀に、吸引分娩による刺激でできた頭の血腫が「石灰化」してしまうことがあります。
石灰化とは、吸引分娩で生じた頭皮の下の血腫がだんだん硬くなって、コブがそのまま残ってしまうことをいいます。
厄介なことに、石灰化まで進んでしまうと頭のかたちがゆがんでしまう可能性が高くなり、外科的治療が必要になる場合もあります。
分娩による頭の血腫は、ふつうは数週間でなくなるものです。
時期が過ぎても頭の膨らみが消えない場合には、すぐに診察を受けるようにしましょう。
吸引分娩と赤ちゃんへの影響
吸引分娩が赤ちゃんの成長に与える影響や出産後の心配な症状について解説していきます。
赤ちゃんの成長に与える影響
吸引分娩は、赤ちゃんの頭部に圧力が加わることで、頭のかたちがゆがむ原因になり得ます。しかし、頭のゆがみは1~3カ月で自然に治るのが一般的です。
前述した頭血腫などのリスクを別として、脳や精神の発達に影響が出ることはないといわれています。
成長発達において影響はありませんが、後々、、見た目の問題に直面することがあります。「顔に左右差がある」「帽子が脱げやすい」など、成長した子どもの自尊心低下に繋がる可能性も考慮する必要があります。
心配な症状や兆候
重度の頭のゆがみが残ったまま成長した場合、見た目の問題に加えて、顔の骨の変形や耳の位置のズレ、歯並びの悪さなどが生じることもあります。それによって、嚙み合わせや視力低下、眼鏡がかけにくいといった機能的な悩みが起こることもあります。
少しでも心配な症状や兆候がある場合は、病院を受診し医師に相談するようにしましょう。
吸引分娩に関するよくある質問
吸引分娩に関する質問や疑問点について解説していきます。
吸引分娩のメリット・デメリットは?
吸引分娩は、分娩を急いで進める必要がある場合に選択されます。例として、赤ちゃんの心拍数が下がっている場合や母体が危険な状態である場合など。
吸引分娩のメリットは、自然分娩が難しい場合でも適切な処置をすることで、安全かつ速やかに分娩を進められる点です。
デメリットとしては、吸引の圧力によって赤ちゃんの頭のかたちが縦に伸びてしまう点。しかし、これは自然に元に戻る場合が多いとされています。
母体へのリスクとしては、吸引によって産道が傷ついてしまうことがある点です。また、会陰(外陰部から肛門)の傷大きくなることや、一時的な膀胱麻痺なども挙げられます。
赤ちゃんの頭のかたちに関するFAQ
Q.吸引分娩で出産しましたが、後遺症が残らないか心配です。
生後3ヶ月の息子を育てています。予定日を超過したため促進剤を使って出産することになりました。子宮口が全開になり胎児も下降したのですが、胎児の心拍が弱くなったことで吸引分娩に切り替えることになりました。
産後は一時的に排尿感覚麻痺などがありましたが、母体・赤ちゃんの経過は順調です。「吸引分娩には後遺症のリスクがある」と医師から言われているため、心配になっています。吸引分娩の後遺症とは、いつどのように現れるのでしょうか?
A.新生児期に異常が確認されなければ問題ないと言えます。
吸引分娩は、赤ちゃんの頭部に吸引カップを当て、陣痛発作に合わせて吸引することで胎児を引っぱりだす分娩方法です。
吸引分娩の後遺症として、出生児は「頭血腫」「頭蓋内出血」「帽状腱膜下血腫」、母体は「産道の損傷」「分娩時の出血が増える」「一時的な膀胱麻痺」などが挙げられます。
今回の場合、産後の経過は順調とのことなので問題はないかと思われます。出生時に関しても、視診や触診で頭血腫などは確認されていないようなので、後遺症の心配はないといえるでしょう。万が一、頭蓋内出血の症状があれば、新生児の出血やけいれん、全身状態の悪化があるはずなので、これもなかったと考えられます。
通常、吸引分娩を2~3回行っても上記のような後遺症は出現しません。
吸引による頭のかたちのゆがみが見られることがありますが、平均して1~3ヶ月で自然に治ることが多いとされています。
まとめ|吸引分娩で不安に感じる頭のかたちは専門医に相談しよう
今回は、吸引分娩で変形した赤ちゃんの頭のかたちは戻るのか?という疑問について触れてきました。
頭のかたちは自然に治ることが多いものですが、原因や程度により様々です。
不安があるようであれば、迷わず頭のかたちの専門医に相談するようにしましょう。専門医の診断を受け、状況を把握できれば、より安心できるでしょう。
本記事により、吸引分娩後の赤ちゃんの頭のかたちに関する不安を少しでも軽減できましたら幸いです。
不安な点はありませんか?
「赤ちゃんの頭のかたち相談室窓口」では、赤ちゃんの頭のかたちにお悩みの保護者さまに向けて、無料相談を受け付けています。
- ゆがみの重症度を知りたい
- かかりつけ医師には「大丈夫」と言われているけど?
- うちの子にヘルメット治療は必要だろうか?
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