頭のゆがみ

【医師監修】赤ちゃんの頭のかたちを綺麗にするには?対策や注意点を紹介

 

更新日:2025年06月09日


多くの方が、赤ちゃんの頭の理想的なかたちは「綺麗に丸く見えるかたち」だと思っていることでしょう。

しかし実際には、頭は綺麗な丸いかたちをしておらず、少しゆがんでいることが多いのが実情です。

生まれたばかりの赤ちゃんの頭の骨はとてもやわらかく、少しの圧力でかたちが変形してしまいます。

そして、1歳頃を目安にだんだんと頭のかたちが決まっていきます。

つまり、頭のかたちを綺麗な丸いかたちにするためには、頭のかたちが決まる1歳よりも前に、何らかの予防対応、適切な時期での治療の必要性を検討する必要があるのです。

この記事を読むことで、赤ちゃんの頭のかたちがゆがむ原因だけでなく、頭のかたちのゆがみを予防する方法が理解できます。

赤ちゃんの頭のかたちを綺麗にするための対策や注意点をしっかり理解し、お子様にあう頭のゆがみ対策を講じていきましょう。
草川 功 先生

1979年東京教育大学附属高等学校。1983年東京医科大学医学部卒業。1983年東京医科大学附属病院小児科。1984年亀田総合病院小児科。1985年国立小児病院麻酔集中治療科・国立小児医療研究センター病態生理研究室。1987年米国ピッツバーグ小児病院麻酔集中治療科・呼吸生理研究室。1990年東京医科大学附属病院小児科(新生児部門)。1992年聖路加国際病院小児科。2022年同定年退職。2022年0歳からのア頭のかたちクリニック、わたなべこどもクリニック。

赤ちゃんの理想的な頭のかたちとは


赤ちゃんの理想的な頭のかたちは、ゆがみがなく綺麗な丸いかたちをイメージする方が多いでしょう。

しかし、実際には赤ちゃんの頭の骨はやわらかく、脳の成長や発達にあわせて変形しやすい特徴があります。

脳の発達において、頭の骨がやわらかいことは大切ですが、頭の骨がやわらかいがゆえに、外から圧力がかかると頭の形が変形してしまうこともあります。

部分的に平らになったり、ゆがみが出たりすることも少なくありません。

理想的な頭のかたちに少しでも近づくには、赤ちゃんの頭や頭蓋骨の仕組みを知り、頭が変形しないような対策をとることが必要です。

赤ちゃんの頭のかたちがゆがむ原因


赤ちゃんの頭のかたちはなぜ変形するのでしょうか。
  • 生まれる前
  • 出産時
  • 出産後

上記の3つのシーンにわけて、頭のかたちがゆがむ原因を紹介します。

生まれる前にゆがむ場合


綺麗なかたちが理想と思っていても、赤ちゃんの頭はさまざまな原因でかたちが変わってしまいます。

頭のかたちが変わることを専門用語で「頭蓋変形(とうがいへんけい/ずがいへんけい)」といいます。

実は、頭蓋変形はお腹の中にいるときから始まっていることがあります。

その主な原因の初産・多胎妊娠・逆子は、お腹のなかで頭に圧力がかかりやすく、頭のゆがみにつながる場合があります。

出産時にゆがむ場合

吸引分娩により圧力がかかり頭の一部が歪んでいる赤ちゃん

長時間の難産では、せまい産道で赤ちゃんの頭が長い時間にわたって圧迫されるので、頭のかたちがゆがむ原因になります。

また、吸引分娩では、吸引した部分が伸びてしまって、頭のかたちがいびつになってしまうことがあります。

出産後にゆがむ場合


出産後にも、さまざまなゆがみの原因があります。

なかでも、「向き癖」は頭のかたちが変わる原因として、最もママパパを悩ませているのではないでしょうか。

生まれたときはゆがみがない赤ちゃんも、「向き癖」によりゆがみがでてくることや、生まれたときからのゆがみが、「向き癖」でさらに強くなることもあります。

ママパパは赤ちゃんの寝ている環境に気を配ったり、向き癖などがないか知ったりすることも大切です。

赤ちゃんの頭のゆがみの種類


頭蓋変形は、ゆがみ方の特徴で種類をわけることができます。

赤ちゃんの頭のかたちでお悩みの場合、赤ちゃんにどのようなゆがみが生じているのか知っておきましょう。

頭のかたちのゆがみには、主に以下4つの種類があります。

長頭症

頭部の前後幅が異常に長くなっている赤ちゃん
長頭症(ちょうとうしょう)は頭を横からみたときに、頭がながく見えるゆがみのことです。

鼻から後頭部にかけての頭の前後幅が、正面から見た時の横幅に比べて長くなっています。

長時間、横向きに寝ていることも長頭症の原因になります。

NICUにいる赤ちゃんは、処置の関係上、横向きに寝かされているので長頭症になりやすいといわれています。

短頭症

頭部の横幅が長く後頭部が平らになっている赤ちゃん
短頭症(たんとうしょう)は「絶壁」ともいわれ、後頭部が自然な丸みをおびずに平らな状態のことを指します。

短頭症の原因には、逆子や吸引分娩があります。

また、長時間仰向けに寝ていることも原因となります。

斜頭症

頭部の片側が斜めに歪んでいる赤ちゃん
斜頭症(しゃとうしょう)は、頭が左右非対称な状態を指します。

頭を上からみたときに片側の頭部が斜めに平たくゆがんでいるのが特徴です。

斜頭症の原因は、吸引分娩や向き癖などで、ゆがみが進行すると、耳の位置が左右非対称になるなど、顔面にもゆがみがでることがあります。

ハチ張り

頭の両端の骨が出ている部分が突き出して見える赤ちゃん

ハチ張りとは、頭の両端の骨が出ている部分が突き出して見える状態のことをいいます。

正面から見たときに頭が四角く見えるので頭が大きく見えてしまい、見た目の印象に影響を与えることがあります。

向き癖、吸引分娩なども悪化要因とは言えますが、遺伝的な頭のかたちの特徴一つとも言え、親子で似ている場合も多く見られます。

頭のゆがみをそのままにしておくとどうなるの?


「自然に治るかもしれないし…」、と様子見されている方もいらっしゃるかもしれませんが、頭のゆがみはそのままにしておくとどうなるのでしょうか。

自然に治る可能性はほとんどない


頭のゆがみは、基本的に自然に治ることはありません。さまざまな方向を向くようになると、一部分に圧力が集中しなくなり、頭のゆがみが気にならなくなることもあるでしょう。そのため、寝るときや抱っこする際の頭の向きを変えることも一つの手です。
しかし、いずれもゆがみが軽度の場合に言えることです。大きなゆがみがある場合、自然に治る可能性はほぼありません。ゆがみをそのままにしておくと、将来的に歯並びやかみ合わせへの影響が出たり、体のゆがみから腰痛や肩こりを引き起こしたりしやすくなる可能性があります。

原因となっている病気を見落としてしまう可能性がある


頭のかたちのゆがみの原因が、頭蓋骨縫合早期癒合症(ずがいこつほうごうそうきゆごうしょう)という病気の場合があります。

この場合、心配されるのは稀な病気のため発見が遅れてしまう可能性があることです。

頭蓋骨縫合早期癒合症の場合、頭蓋骨の隙間が通常より早期にふさがって頭のかたちがゆがむため、見落としてしまうと、変形だけでなく脳の発達に影響する可能性があります。

1歳頃までに頭のかたちはほぼ決まる

頭のかたちは、生後1歳頃までにほとんど決まってしまいます

ゆがみがある場合、髪の毛が生えそろってきて目立たなくなることはあっても、赤ちゃんの頭のゆがみが自然に治ることはありません。

そこまで重症ではない場合でも、お子さまが頭のかたちが原因で好きな髪型を楽しめなかったり、帽子選びで苦労したり、コンプレックスにつながることがあるかもしれません。

赤ちゃんの頭のかたちのゆがみを改善する場合は、1歳になる前の早い時期が効果的です。

赤ちゃんの頭を守るためのポイント


赤ちゃんの頭のかたちが気になっても、ママパパだけでは判断が難しい場合もあるでしょう。その場合は、医療機関へのに相談も視野に入れてみましょうすることも一つの手です。
「健診で診てもらえるの?」「専門医はいるの?」と悩む方に向けて、赤ちゃんの頭を守るための4つのポイントをご紹介します。

健診では診てもらえない


赤ちゃんの1ヶ月健診・3ヶ月健診では、身長、体重、胸囲、頭囲の測定があります。頭囲測定については、脳の発育や病気の有無を確認する目的でおこな行われるもので、頭のかたちの確認や頭のポジショニングに関する指導はほとんどありません。さらに、集団検診では見過ごされたり、相談の時間が取れなかったりすることもあるでしょう。

そのため、頭のゆがみの診断・治療の適齢期を過ぎてしまうことがあります。

専門医のいる病院や関連施設で出産すれば、頭のゆがみに対するフォローが期待できますが、そうでない場合はサポートを受けられない場合ことも少なくありません。まずは、ママパパが赤ちゃんの頭のかたちがが気になりはじめたらった時点で、まずはお近くの小児科専門医のいる医療機関へ相談してみましょう。

専門医による診断


ママパパでは判断が難しい場合、専門医に相談することも1つの手です。受診の際には、赤ちゃんの頭のかたちのゆがみの原因を、しっかりと調べてくれる病院を選びましょう。専門機関であればX線検査などで、赤ちゃんの頭のゆがみが病気によるものなのか、それとも向き癖などによるものなのか鑑別してもらえます。

また、治療に進むケースも考えて、専門医を選ぶ際は以下の点に注意しましょう。
・再診時に、頭蓋骨の成長やヘルメット治療の効果・副作用、発達・発育状況を診てくれるか
・ヘルメットを用いる場合は、医療機器機関の承認を得たているものかヘルメットを用いているか
・専門医がヘルメット治療の研修を医師専門医が受けているか

赤ちゃんの頭のゆがみを適切に診断、治療してくれる専門医を選ぶことが重要です。悩んだらまずは、カウンセリングや相談から始めてみましょう。

早期受診の重要性


頭のかたちが気になる場合は、早いうち期に医療機関を受診し、アドバイスを受けたり、治療を始めたりしましょうすることが重要です。病気が原因の場合は特に見極めが難しいため、医療機関での早期発見診断が鍵となります。

赤ちゃんの頭のゆがみの健診にの適した時期齢期は、生後2〜6ヶ月です。まずは、向き癖などの外的要因によるものなのか、病気によるものなのか、専門医に診断してもらいましょう。
赤ちゃんの頭は6ヶ月頃より徐々に骨が硬化し始めて、1歳頃にはほぼ頭のかたちが決まると言われており、形が決まりきる前に治療を開始する必要があります。

そのため、赤ちゃんの頭のかたちを治療する際が必要となった場合は、月齢が早く、頭の成長が大きい時期の方が効果は高まるのですります。また、頭への圧力を分散するなど、月齢が早く頭蓋骨がまだやわらかい時期だからこそ効果的なケアもあります。

治療のタイミングを逃さないためにも、少しでも気になったら専門機関ママパパの心配や不安を早く和らげるためにも、早期に専門医のサポートを受けてみると良いかもしれません良いでしょう。

3Dスキャンによる頭のかたちの測定


医師の診察のみでも頭のゆがみの重症度のを評価することは可能ですが、3Dスキャンではより定量的な評価ができます。赤ちゃんの頭を360度確認できる画像が撮影でき、頭蓋骨の左右対称性などの解析数値もあわせて算出されるため、受診当日に頭の形状と変形の重症度のが判定が実現します判断可能です。

治療に進む場合は、赤ちゃん一人ひとり矯正後の頭のかたちにあったヘルメットを作成する際にも利用されることがもあります。他にも、定期的な診察時にで3Dスキャンを取り入れることで、頭のかたちの改善が客観的に確認できます。

日本での普及はまだ十分とは言いえない3Dスキャンナーですが、赤ちゃんの頭のかたちを専門とする医療機関では採用されているケースがあります。静止することが難しい赤ちゃんのために、頭全体の形状を一瞬で撮影できる機器3Dスキャナーもあるため、「子どもが小さいから撮影できないかも」と不安に思う必要はありません。

頭のかたちのゆがみを予防する方法


赤ちゃんの頭のかたちをゆがめないために、日常的に予防する方法として以下の2つが挙げられます。
  • 体位変換
  • タミータイム

1. 体位変換


体位変換は、ゆがみの原因になる向き癖がつかないよう、寝かせ方や抱っこの仕方を工夫する予防方法です。

こまめに声をかけたり、おもちゃを使って赤ちゃんが色々な方向を向くようにしてあげると良いでしょう。

既に向き癖がある場合は、バスタオルなどを使って体位変換をおこなうのもおすすめです。

折りたたんでぐるぐる巻きにしたバスタオルなどを、片側の背中の下に入れ、向き癖とは逆方向に体の向きを調整します。

ただし、赤ちゃんが動くようになるとバスタオルがずれてしまい、赤ちゃんに変な姿勢を取らせていますこともあるので、注意が必要です。

体位変換を行う場合は赤ちゃんの負担にならないように、こまめに向きを変えてあげましょう。

2. タミータイム


タミータイムとは日本語で「腹ばい遊び」とも呼ばれ、赤ちゃんが起きているときに、うつ伏せで過ごす時間をつくってあげることを指します。
1日に2~3回、5分程度の短い時間からはじめて、徐々に時間を延ばし、1日のうち合計30~60分程度うつ伏せで過ごす時間をつくります

日中の機嫌のよい時間帯におこなうのがおすすめです。

ただし、鼻や口がふさがれることのないように、必ずママやパパが見守りながらおこないましょう。

重症の場合は「ヘルメット治療」も検討してみましょう

矯正用ヘルメットを被る赤ちゃん

「頭のゆがみがひどい気がする」「自分で対策するだけでは心配」という方は医療機関でおこなわれている「ヘルメット治療」も検討してみましょう。

ヘルメット治療とは、赤ちゃんの頭のかたちのゆがみを改善するためのヘルメット矯正治療のことを指します。

手術をするわけでも、無理やりかたちを矯正するわけでもなく、「あくまでも赤ちゃんの自然な骨の成長に沿って、あらかじめ綺麗な頭のかたちの枠組みを作り、そのかたちに合わせて成長を促す」という治療方法です。

医療機関では頭蓋骨縫合早期癒合症かどうかを診断してもらえるだけでなく、「ヘルメット治療」も含めて治療方針の提案を受けることができます。

また『赤ちゃんの頭のかたち相談室』では、赤ちゃんの頭のかたちが気になっているママパパからの相談を受けています。

Webフォームからは24時間いつでもご相談を受付中。

相談室スタッフがお悩みをお伺いし、次の一歩をサポートいたします。

ご希望の場合には医療機関への相談や、ヘルメット治療についてもご案内いたしますので、まずはお気軽にお問合せください。

まとめ|ゆがみに気づいたら0歳のうちに対策しましょう


今回は赤ちゃんの頭を理想のかたちにしていくために知っておきたいことを紹介してきました。

ポイントとなるのは以下の3つです。
  • 赤ちゃんの頭はやわらかく、変形しやすい
  • 1歳頃までには頭のかたちがほとんど決まってしまう
  • ヘルメット治療の開始時期は生後6ヵ月頃までが望ましい

これらのポイントからもわかるように、頭のかたちのゆがみを対策できる期間は決まっています。

どの程度の頭のゆがみであれば相談・治療が必要かどうか、ママやパパだけで判断することは容易ではないため、少しでも頭のかたちに不安や違和感を覚えたら、赤ちゃんの頭のかたちを診てくれる専門機関に相談しましょう。