頭のゆがみ

【医師監修】斜頭症の重症度はどう判断する?早めの相談がおすすめの理由


赤ちゃんの斜頭症に気付いたときに、「このゆがみは重症なのかな?」「自然に治るのかな?」と心配になりますよね。

「頭のかたちのゆがみは大きくなるにつれて自然に治るよ」と周りの人からいわれることがありますが、重症度によってはそのまま放置することでゆがんだまま成長することもあります。

そこで本記事では、そのような後悔をなくすために、斜頭症のリスクや重症度の判断方法、自己判断で様子見をしてはいけない理由を詳しく解説します。

吉田 丈俊 先生

1994年3月、富山医科薬科大学医学部卒業。1994年5月、富山大学附属病院小児科入局。1996年1月、大阪府立母子保健総合医療センター新生児科臨床実地修練生。1997年4月、厚生連高岡病院小児科(NICU専属)。2000年6月、京都大学ウィルス研究所情報高分子化学教室研究生。2002年4月、糸魚川総合病院、小児科医長。2002年10月、富山大学附属病院小児科助手。2004年10月ドイツリウマチ病研究センターベルリン、ポスドク。2007年10月、富山大学附属病院周産母子センタ−講師。2010年11月、富山大学附属病院周産母子センター、センター長、准教授。2017年10月、富山大学附属病院周産母子センター、特命教授。2022年4月、富山大学学術研究部医学系教授、兼富山大学附属病院周産母子センター長。現在に至る。
【資格】小児科専門医、 周産期専門医(新生児)、 臨床遺伝専門医

斜頭症とはどんな状態?


斜頭症とは、赤ちゃんの頭を上から見たときに頭部の片側が斜めに平たくなっている状態のことを指します。

後頭部のゆがみが進行すると、耳の位置が左右で非対称になったり、前頭が斜めになると頬部が出っ張ったりと、頭だけでなく顔面にもゆがみが生じることがあります。


斜頭症の重症度とは?


斜頭症の重症度とは、斜頭(頭の斜めのゆがみ)の強さをレベルによって区分したものです。測定の方法や用いられる分類は、医療機関によって異なります。

医療機関では、重症度だけでなく、月齢や骨の硬化度、大泉門(頭頂部のへこみ)の閉じ具合など総合的に診断します。

重症度の判断基準


重症度の判断は目視による視覚的評価や、頭部用のノギス(測定器)を用いた計測、3Dスキャンによる計測など複数の方法を組み合わせて赤ちゃんの頭のゆがみを評価します。

ノギスや3Dスキャンを用いて定量的な測定をする場合、CA(cranial asymmetry)、CVAI(Cranial Vault Asymmetry Index)と呼ばれる「頭の左右対称度合い」を表す指標により重症度を分類していきます。

これらの数値と視覚的評価を用いて判断するため、医学的な知識と経験が必要になるため、一般の方が家庭で正確に測定して判断することは難しいとされています。

斜頭症が重症だとどうなる?


斜頭症が重症のまま成長するとどうなるのでしょうか。

まずは容姿的な問題があげられます。斜頭症は頭のかたちが左右非対称なため、目や耳の位置が左右で一致しなかったり、帽子やメガネをつけにくくなったりする可能性があります。また、斜頭症が原因で歯並びやかみ合わせが悪くなるケースもあります。

斜頭症の一部は治療を要する


赤ちゃんの斜頭症について身近な人からは「自然に治るから大丈夫」、「首がすわったら治る」などといわれることもあるようです。

しかし、頭のかたちは生後6ヶ月頃から1歳頃にかけてほぼ固まってしまうため、放置して自然にゆがみが改善されるとは言い切れません。

ゆがみが軽症の場合は、首座りや成長に伴って自然に改善していくことが多いですが、中等度以上の場合は自然に改善せずにゆがみがそのまま残ることもあります。ため、頭のかたちが定まってしまう前、つまり0歳児の段階で何らかの対策を取る必要があります。

例えば、同じ姿勢を続けることで頭のかたちがゆがむため、寝る姿勢や抱っこ、授乳姿勢を一定にせず、こまめに向きを変える「体位変換」や、「タミータイム」と呼ばれるうつぶせ遊びなどが対策としてあげられます。

ただし、うつぶせは乳幼児突然死症候群(SIDS)のリスクがあるため、必ず赤ちゃんから目を離さないように気を付けてください。

重症の場合はヘルメット治療も検討してみましょう




頭のかたちのゆがみがひどい場合は、医療機関でおこなわれる「ヘルメット治療」も選択肢の一つかもしれません。

ヘルメット治療は、矯正用ヘルメットをかぶることによって、すでに変形して平らになってしまった部分の成長を積極的に促し、自然な頭のかたちへと近づけていくものです。

赤ちゃんの頭蓋骨がやわらかい生後6ヶ月頃までにヘルメット治療を開始すると、効果が得られやすいとされています。

このヘルメット治療に用いる矯正用ヘルメットは、赤ちゃんの頭のかたちに合わせてオーダーメイドで作成します。

最初は数時間からヘルメットの着用を始め、経過を見ながら着用時間を長くしていき、最終的にはお風呂の時間を除き寝ている間もずっとヘルメットを着用します。

ヘルメット治療の期間は、約6ヶ月程度です。

医療機関や使用するヘルメットのメーカーなどでも異なりますが、日本では現時点で保険適応外であり、ヘルメット治療の総額は約40~60万円(税込)です。

まとめ|斜頭症の重症度は自己判断せずに医療機関に相談を


重症度の判断には、専用の測定器具と医学的な知識や経験が必要なため、赤ちゃんの斜頭症はご家族だけで簡単に判断・治療できるものではありません

頭のゆがみを自己判断して医療機関への相談が遅れると、斜頭症の治療に最適な時期が過ぎてしまい「もう少し早く行動しておけばよかった」と後悔するかもしれません。
医療機関では適切な診断だけでなく、自宅での対策やヘルメット治療の提案など個々に合わせたアドバイスを受けることができます

頭のかたちのゆがみが気になる方は、赤ちゃんの頭のかたちが完成する前に医療機関へ相談し、適切な診断と治療を受けることをおすすめします。