頭のゆがみ

斜頭症とは?頭がゆがむ原因や放置リスク、予防・治療方法について


赤ちゃんの頭が左右対称ではない、部分的に平らな気がする…。とお悩みではないですか?

赤ちゃんの頭部を真上から見たり、頭を撫でたりしたときに違和感を感じて、成長に問題がないか不安に感じるママやパパも少なくないでしょう。

日本では「ハイハイが始まると自然に治るから様子を見よう」といわれることも多いですが、そのまま頭のかたちがかたまる可能性は本当にないのでしょうか?

そこで本記事では、斜頭症の原因やゆがんだまま成長したときのリスク・影響知っておきたい対策について詳しく解説します。

江藤 宏美 先生

1988年、長崎大学にて看護師・助産師免許取得後、長崎大学病院に助産師として勤務。1993年~1994年、University of California, San Franciscoに留学、その後、1996年~2001年、聖路加看護大学(現:聖路加国際大学)にて修士課程・博士課程を修了。2002年~2012年、同大学で助産教育に携わる(准教授)。この間16年、家庭出産に携わる。2012年より、現職の長崎大学生命医科学域、教授に就任し現在に至る。日本頭蓋健診治療研究会理事、日本助産評価機構理事、日本助産学会ガイドライン委員会・編集委員会委員、長崎県助産師会会長、日本看護科学学会英文誌編集委員会managing editor。

赤ちゃんの「斜頭症」とは?



斜頭症とは、赤ちゃんの頭を上から見たときに頭部の片側が斜めにゆがんでいる状態のことをいいます。

ゆがみが進行すると耳の位置が左右で非対称になったり、前頭が斜めになると頬部が出っ張ったりと、頭だけでなく顔面にもゆがみが生じることがあります。

赤ちゃんの頭蓋骨が「綺麗な丸ではないな」と感じたら、顔面が左右非対称になっていないか、赤ちゃんの頭を上から見たときに左右の耳の位置がずれていないか、頭のかたち以外も見てみてください。
▼斜頭症の主な特徴
  • 頭のかたちが左右非対称
  • 頭の一部(特に、後頭部)が扁平になっている

重症度はどう判断すべき?

斜頭症は頭のかたちのゆがみ具合で重症度のレベルがわけられています。「我が子は重症なのかな?」と気になるかもしれませんが、一般の方が家庭で重症度を判断することは非常に難しいのが実情です。

そのため、正確な頭のかたちを知りたい方は、まずは医療機関へ受診することをおすすめします。

医療機関では目視による視覚的評価や、頭部用のノギス(測定器)を用いた計測、3Dスキャンによる計測など、複数の方法を組み合わせて赤ちゃんの頭のゆがみを評価します。

また、ゆがみの原因が「頭蓋骨縫合早期癒合症(ずがいこつほうごうそうきゆごうしょう)」と呼ばれる病気の場合がありますが、この病気の疑いがある場合は、病気の確定診断をおこなうためにレントゲンやCT等の検査を行うこともあります。

頭のゆがみを自己判断して医療機関への相談が遅れると、斜頭症の治療に最適な時期が過ぎてしまい、頭のかたちがゆがんだまま成長したり、脳の発達に影響を与えたりするため、早めに相談することが大切です。

斜頭症の原因


赤ちゃんの斜頭症の原因として、主に以下の3つの原因があげられます。
  • 頭蓋骨縫合早期癒合症である
  • 出産時に難産などで頭に圧がかかった
  • 向き癖がある

斜頭症には、病気が原因のケースと、外部からの圧力が原因のケース(出産時、赤ちゃんの寝方)があり、その重要度の度合いによって治療・手術の必要性が検討されます。

1. 頭蓋骨縫合早期癒合症である


1つ目は「頭蓋骨縫合早期癒合症」と呼ばれる病気が原因の場合です。

新生児の頭蓋骨のパーツは通常バラバラになっており、生後2年間で約4倍の大きさにも成長する脳の成長に伴って、1歳半〜2歳頃を目安に隙間が徐々につながっていきます。

ところがこの骨の連結(骨癒合)がなんらかの理由(遺伝疾患など)で早く起きてしまうと、早期に癒合した部分では骨が成長できなくなるため、頭蓋骨は全体としていびつな形に成長してしまい、脳の正常な成長を妨げてしまう場合があります。

頭蓋骨縫合早期癒合症が原因である斜頭症の場合、赤ちゃんの頭蓋骨が正常に拡大しないことで脳の発達に影響を及ぼすこともあるため、早期に手術を検討する必要があります。

2. 出産時に頭に圧力がかかった


赤ちゃんの頭はとてもやわらかいため、外部からの圧力で変形しやすくなっています。
難産で赤ちゃんが長時間産道に頭が挟まれてしまうことで、頭に圧力がかかってゆがんでしまうこともあります。

また、出産時に赤ちゃんが自力で胎外に出ることが難しい場合に行われる「吸引分娩」では、その吸引の力によって赤ちゃんのやわらかい頭蓋骨が変形してしまうこともあります。

3. 向き癖がある


生後の向き癖も頭のゆがみの原因となります。
向き癖は赤ちゃんの頭のゆがみの原因の中でも一般的なものです。

赤ちゃんに向き癖があると、寝ているときに左右どちらかの同じ面がベッドや布団に接することになり、その状態が習慣化してしまうと頭がゆがんでしまうのです。

斜頭症をそのままにしておくとどうなるの?


赤ちゃんの頭のかたちがいびつでも「自然に治るよ」と周りにいわれることも多くありますが、本当にそのまま放置して頭のかたちは治るのでしょうか。

結論から言いますと、斜頭症を放置してしまうと、そのままのかたちで頭蓋骨が固まってしまいます。

生後すぐの赤ちゃんの頭はやわらかく、かたちが変わりやすいので自然に治る場合もありますが、月齢が進み生後6か月を過ぎると徐々に頭はかたくなり、1歳頃にはかたちがほぼ定まるといわれています。

そのため、頭のかたちが定まってしまう前、つまり、0歳児の段階で何らかの対策を取らないと、斜頭症のまま成長してしまう可能性が高くなってしまいます。

斜頭症のまま成長してしまうと、帽子やメガネを付けにくい頭のかたちになったり、耳の位置が非対称になってしまう可能性があります。

斜頭症を予防するために日常的にできること


では、頭のかたちが定まる前、0歳の段階でどのような対策をとれば良いのでしょうか。

ここでは、赤ちゃんの斜頭症を予防する具体的な対策を紹介していきます。日常的にできることなのでぜひ取り入れてみてください。

同じ姿勢を続けない


同じ姿勢を続けることで一定方向の圧力がかかり、頭のかたちがゆがみやすくなります。

同じ姿勢とは「寝ている状態」を想像する方が多いと思いますが、抱っこする姿勢や授乳中の姿勢、チャイルドシートやベビーカーなどの姿勢も当てはまります。なるべく向きを変えたり休憩したりして同じ姿勢が続かないようにしましょう。

タミータイムをおこなう


頭を一定の方向で寝かせ続けないように「タミータイム」をおこなうことが予防につながると考えられています。

タミータイムとは、保護者の方に見守られながら、おなかの上や床の上でうつぶせになることをいいます。日本では「うつぶせ遊び」「うつぶせ練習」「腹ばい練習」と呼ばれることもあります。

米国小児科学会( American Academy of Pediatrics, AAP)では乳幼児突然死症候群(Sudden Infant Death Syndrome, SIDS)を予防するために、赤ちゃんを仰向けで寝かせることが推奨されました。しかし、同じ姿勢を続けることで頭のかたちがゆがむ赤ちゃんが増えてしまい、その対策としてタミータイムがおこなわれるようになりました。

タミータイムによって、うつぶせ寝によって乳幼児突然死症候群(SIDS)になるリスクは上がってしまうため、タミータイムをおこなう際は必ず目を離さないようにしましょう。

景色を変えて向き癖を治す


同じ景色で過ごしているとある一定の方向を向いてしまう、いわゆる「向き癖」がつくことがあります。

向き癖をつけないようにベッドで寝かせる向きを180度変えたり、周りに置いているおもちゃや、お母さんの添い寝の位置を変えたりして変化させてみましょう。

また、向き癖がついている場合は、向いている反対側に興味をそそるおもちゃを置いたり、音を鳴らしたりして刺激してあげるとよいです。

重度の場合はヘルメット治療を検討してみましょう



「頭のゆがみがひどい気がする」「自分で対策するだけでは心配」という方は医療機関でおこなわれている「ヘルメット治療」も検討してみましょう。
ヘルメット治療とは、赤ちゃんの頭のかたちのゆがみを改善するためのヘルメット矯正治療のことです。

手術をするわけでも、無理やりかたちを矯正するわけでもなく、あくまでも赤ちゃんの自然な頭蓋骨の発達に沿って、あらかじめ綺麗な頭のかたちの入れ物を作り、そのかたちに合わせて成長を促す、というイメージです。

医療機関では頭蓋骨縫合早期癒合症かどうかの診断を受けるだけでなく、「ヘルメット治療」の適用も含めて治療方針の提案を受けることができます。

赤ちゃんの頭のかたち相談室』では、赤ちゃんの頭のかたちが気になっているパパママからの相談を受けています。

Webフォームからは24時間いつでもご相談を受付中。

相談室スタッフがお悩みをお伺いし、次の一歩をサポートいたします。

医療機関への相談やヘルメット治療についてもご希望の場合にはご紹介いたしますので、まずはお気軽にお問合せください。

まとめ|斜頭症かも…と思ったら早めに相談してみましょう


斜頭症は「自然に治る」といわれたり、「個性のひとつ」としてそのままにされるケースも多くあります。

しかし、頭のゆがみには治療が必要な場合や、適した治療の時期があります。

「早く行動しておけばよかった…」と後悔しないためにも0歳のうちから向きぐせを直すような体位変換やタミータイムなど日常的にできる予防をおこないましょう。

また、早めに医療機関で相談することでゆがみの原因の判別や、ヘルメット治療などの提案を受けることができます。赤ちゃんの頭のかたちに少しでも不安を感じたら、頭のゆがみを診てくれる医療機関で相談しましょう。