頭のゆがみ

短頭症は自然に治る?ゆがむ原因や放置リスク、対処・治療方法を解説


「赤ちゃんの後頭部が平らになっている…」「かたちがゆがんでいるけど治るのかな?」とお子様の頭のかたちがゆがんでいると不安になりますよね。

「自然に治るよ」と周囲からアドバイスをもらい様子を見ている方もいらっしゃると思いますが、赤ちゃんの頭蓋骨は、一定期間のやわらかい時期を過ぎることで、対応が手遅れになる場合があります

そこで本記事では、短頭症の特徴や原因を紹介し、日常的な予防方法や、早めの医療機関への相談がなぜ必要なのかを解説します。

小室 広昭 先生

1984年東京大学医学部医学科卒業。東京大学小児外科学教室入局。東大病院、日本赤十字社医療センター、埼玉県立小児医療センター、St.Jude小児病院留学などを経て、1997年より自治医科大学講師。2000年より筑波大学講師および准教授。2011年より東京大学小児外科准教授。2013年より上尾中央総合病院小児外科科長ならびに埼玉医科大学大学病院客員教授。2022年より0歳からの頭のかたちクリニック理事長。現在に至る。

短頭症とは?



短頭症(たんとうしょう)は頭のゆがみの一種で、後頭部が丸みを帯びずに平らになっている状態のことを指します。

後頭部に手を添えるとペタンコになっているため、「絶壁頭」と表現されることもあります。
▼短頭症の特徴
  • 頭の横幅が長い
  • 頭の前後が短い
  • 顔を横から見ると、頭頂が高くなる

赤ちゃんの短頭症の原因


赤ちゃんが短頭症になる原因は大きく分けて2つあります。

仰向けで寝かせている


短頭症になりやすい主な原因は、「仰向け寝」といわれています。ほとんどの短頭症のケースがこれに当てはまります。

うつぶせで寝ると乳児突然死症候群(にゅうじとつぜんししょうこうぐん)のリスクがあることから、仰向け寝が主流となっています。

乳児突然死症候群とは、事故や窒息ではなく、眠っている間に突然なくなってしまう病気です。

この病気は乳幼児の死亡原因の第4位となっており、予防方法は確立されていませんが、1つのポイントとして「1歳になるまでは、寝かせるときには仰向けで寝かす」ことが良いとされています。

この考え方が広まった一方で、仰向けで寝かせつけることで赤ちゃんの後頭部に圧力がかかり続け、後頭部が平たくなってしまうのではないかと考えられています。

頭蓋骨縫合早期癒合症である


稀ですが、頭のかたちが変形する病気が、短頭症の原因となっている場合があります

頭蓋骨縫合早期癒合症(ずがいこつほうごうそうきゆごうしょう)は、頭蓋骨のつなぎ目が何らかの理由で早期にくっついてしまう病気です。

頭蓋骨のつなぎ目が早期にくっつくことにより、頭蓋骨がいびつになり、短頭症になるケースがあります。

頭蓋骨縫合早期癒合症が原因の短頭症である場合、頭蓋骨が正常に拡大できないため、脳の発達に悪影響が出る恐れがあります。頭蓋骨縫合早期癒合症の懸念がある場合は、早期に治療を検討しなければなりません。

短頭症をそのままにしておくリスク


赤ちゃんの頭のかたちのゆがみは珍しいものではないため、まわりの人から「自然に治るよ」「気にしすぎだよ」と言われている方も少なくないのではないでしょうか?

しかし、頭のゆがみをそのままにしていると、次のようなリスクにつながる可能性があります。

頭のかたちがゆがんだままになってしまう


赤ちゃんの頭蓋骨は、生後まもなくはとてもやわらかく、かたちが変わりやすいのですが、成長するにつれてかたくなり、かたちが定まってきます。

そのため、そのままにしておくと、頭はゆがんだかたちのままで硬くなってしまいます

赤ちゃんの頃は気にならなくても、将来、頭のかたちが原因で好きな髪型にできなかったり、かぶりたい帽子が合わなかったり、いじめやからかいの対象になったり、といった一生の悩みに発展する可能性もあります。

発達に影響が出てしまう可能性がある


仰向けが原因の短頭症では問題ありませんが、稀ではありますが、頭蓋骨縫合早期癒合症が原因となっている場合は、脳の成長に合わせて頭蓋骨が拡大できないため、脳の成長が妨げられてしまう可能性があります。
脳の成長が妨げられることによって、運動発達や成長発達に影響が出る可能性も否定できません

短頭症の予防と対策


一般的にお座りを始める6ヶ月頃から徐々に骨がかたくなりはじめ、1歳頃には赤ちゃんの頭のかたちがほぼ決まるといわれています。

短頭症のまま成長させないためには、頭がまだやわらかい1~3か月の早い時期に短頭症の予防や対策をすることで改善の可能性を期待できます。

ここでは、赤ちゃんの短頭症を予防するための具体的な方法をみていきましょう。

日常的にできることをご紹介しますので、ぜひ取り入れてみてください。

なお、赤ちゃんがうつぶせになると窒息のリスクもありますので、赤ちゃんから目を離さないよう十分に気をつけてください。

授乳姿勢などを適度に変える


仰向け寝のように同じ姿勢を続けることで一方向に圧力がかかり、頭のかたちがゆがんでしまいます。

これは寝ている時間だけでなく、抱っこや授乳姿勢、ベビーカーでの姿勢にも当てはまります。

そのため、同じ姿勢にならないように、こまめに「体位変換」をおこなうようにしましょう

また、同じ姿勢を続けることで「向き癖」がつくことがあります。

向き癖によって、頭のかたちにゆがみが生じることもあるため、癖をつけないためにも、こまめな体位変換が必要です。

タミータイムをおこなう


頭を一定の方向で寝かせ続けないように「タミータイム」をおこなうことが予防につながると考えられています

タミータイムとは、保護者の方に見守られながら、おなかの上や床の上でうつぶせになることをいいます。

日本では「うつぶせ遊び」「うつぶせ練習」「腹ばい練習」と呼ばれることもあります。

ただし、うつぶせ寝は乳幼児突然死症候群(SIDS)になるリスクが上がってしまうため、タミータイムをおこなう際は必ず目を話さないようにしましょう。

ベビー枕は要注意


また、赤ちゃんの頭のかたちを丸くする方法として、ベビー枕やドーナツ枕を思い浮かべる方も多いのではないのでしょうか。

実はこのベビー枕やドーナツ枕は、頭のゆがみに予防の効果があるかどうか、科学的に十分な根拠がありません。

むしろアメリカでは、保護者や医療従事者へ向けて、「ベビー枕やドーナツ枕を使用しないように」との注意喚起がされています。

短頭症の予防としては、体の向きを定期的に変えてあげる方法をおすすめします。

気になる場合は「ヘルメット治療」を検討してみましょう



「絶壁がひどい気がする」「自分で対策するだけでは心配」という方は医療機関でおこなわれている「ヘルメット治療」も検討してみましょう。

ヘルメット治療とは、赤ちゃんの頭のかたちのゆがみを改善するためのヘルメット矯正治療のことを指します。

手術をするわけでも、無理やりかたちを矯正するわけでもなく、「あくまでも赤ちゃんの自然な骨の発達に沿って、あらかじめ綺麗な頭のかたちの枠組みを作り、そのかたちに合わせて成長を促す」という治療方法です。

医療機関では頭蓋骨縫合早期癒合症かどうかを診断してもらえるだけでなく、「ヘルメット治療」も含めて治療方針の提案を受けることができます。

関連する記事


また『赤ちゃんの頭のかたち相談室』では、赤ちゃんの頭のかたちが気になっているパパママからの相談を受けています。

Webフォームからは24時間いつでもご相談を受付中。

相談室スタッフがお悩みをお伺いし、次の一歩をサポートいたします。

ご希望の場合には医療機関への相談や、ヘルメット治療についてもご案内いたしますので、まずはお気軽にお問合せください。

まとめ|短頭症かも?と思ったら早めに相談しよう

短頭症は仰向けの姿勢で長時間過ごすことが主な原因です。

良い子にして寝ていると親としては助かりますが、頭のかたちのゆがみを引き起こしてしまう可能性があります。

頭のかたちのゆがみを予防するために、0歳のときから同じ姿勢を続けず、抱っこの姿勢を変えたり、タミータイムをおこなったりと「体位変換」をこまめにしましょう。

また、短頭症の原因が頭蓋骨縫合早期癒合症のような病気である可能性もあります。

不安な方は早めに医療機関へ相談し、ヘルメット治療など医師の提案を受けてみることをおすすめします。

「絶壁くらいで…」と思わず、頭のゆがみを診てくれる医療機関へ早めに相談しておきましょう。