頭のゆがみ

頭のかたちは遺伝で決まる?頭蓋変形の原因やリスク、対策について


赤ちゃんの頭のゆがみの原因には、遺伝がかかわっている場合とそうでない場合があります。

赤ちゃんの頭がゆがむ原因は、一概に遺伝が原因とは言い切れず、多くの場合は「向き癖」などで外部から圧力がかかることで生じると考えられています。

また、産前産後の外部圧力によってゆがんでしまうこともあります。

そこで本記事では、遺伝も含めた赤ちゃんの頭のゆがみの原因について紹介します。

日下 康子 先生

1989年、東北大学医学部卒業、東北大学脳神経外科入局。1997年、東北大学医療技術短期大学講師。2000年、東北大学医学部脳神経外科講師。2002年、米国フェニックス、St. Joseph’s Hospital and Medical Center, Barrow Neurological Institute 臨床研修留学。2004年、ドイツ:ハノーバー、International Neuroscience Institute 脳神経外科 臨床研修留学。2004年〜2014年、東京慈恵医科大学脳神経外科講師。2014年〜脳神経外科・脳ドック、リハビリテーション病院、人間ドック・検診クリニック部長、院長、内科・整形外科クリニック、訪問診療、と総合診療を経験ののち、2018年より医療法人社団ICVS東京クリニック勤務。2019年、同クリニック院長・理事、現在に至る。

頭のゆがみの原因は?


赤ちゃんの頭のゆがみの原因には、遺伝がかかわっている場合とそうでない場合があります。

遺伝によるゆがみの場合


遺伝子異常によっておこる病気の症状の一つとして、頭蓋骨異常が生じ、頭のゆがみ引き起こされることがあります。

具体的には、アペール症候群クルーゾン症候群などがあります。このような症候群の諸症状の一つとして頭蓋縫合早期癒合症(ずがいほうごうそうきゆごうしょう)があらわれると、頭蓋変形を起こします。

この場合には、脳の発達に影響を及ぼすリスクがあるため、早期診断・早期治療が必要となります。

1. 頭蓋骨縫合早期癒合症(ずがいこつほうごうそうきゆごうしょう)

生まれたばかりの赤ちゃんの頭蓋骨は、生後1歳半頃まではいくつかのパーツに分かれており、脳の表面に隙間を開けて並んでいます

脳の大きさは生後2年間で約4倍にも成長しますが、それに伴い、頭の骨も成長・拡大し、1歳半〜2歳を目安に骨ごとのパーツの隙間が徐々に骨化し、つながっていきます。

ところがこの骨どうしの隙間の骨化がなんらかの理由で部分的に早く起きてしまうのが「頭蓋縫合早期癒合症」です。
早すぎて癒合した骨の周囲は成長できず、結果的に頭蓋骨全体がゆがんでしまうのです。

2. 水頭症(すいとうしょう)


水頭症は、頭の中に溜まっている髄液の循環や吸収に異常が起き、頭が大きくなってしまう病気です。先天性の水頭症の中には、遺伝性の明らかなものがあります。

頭蓋骨縫合早期癒合症、水頭症とも早期の診断と治療が必要です。

遺伝が関係しないゆがみの場合


遺伝が関係していない場合、つまり明らかな先天性疾患がない場合は、胎内での外部圧力から出産後の寝方まで、頭がゆがむ原因はさまざまです。
出産前後の赤ちゃんの頭は、産道をスムーズに通れるよう柔らかくなっているため、圧力によってゆがみやすくなっています。大人にとっては少しの圧力でも、赤ちゃんの頭は変形をきたすことがあるのです。

1. 出産前

初産 母体の子宮の広がりが弱く、赤ちゃんのいるスペースが狭い
多胎妊娠 単胎妊娠に比べ赤ちゃん一人当たりのスペースが狭い
逆子 通常なら赤ちゃんの頭が母体の骨盤の間に入る(頭が下)ことで外部の圧力から守られるが、逆子の場合はそれがないため外部の圧力の影響を直接受けやすい

2. 出産時

難産 長い時間産道に頭を挟まれることでゆがみを生じる
吸引分娩 吸引カップを頭に装着し、吸引圧をかけて頭をひっぱったときに、頭が伸びることがある
早産 正常の週数で出産するより、さらに頭蓋骨がやわらかい状態で産まれる

ただし、妊娠中の状況や出産方法が頭のゆがみに直結するとは言い切れません。「自分のせいで」と妊娠中の過ごし方や出産方法を責める必要は全くありませんので、安心してください。

3. 出産後の「向き癖」


向き癖」とは、赤ちゃんが寝ているときや、抱っこしているときに、頭がいつも同じ方向を向いている状態を言います。

特に、長時間頭のポジションが固定される睡眠時に癖がつきやすいと言われています。

そのときに後頭部の同じ面ばかりが下になることで、脳の重さで柔らかい頭蓋骨に圧力がかかり続けて、頭のかたちがゆがんでしまうのです。

頭のかたちのゆがみを放っておいたらどうなる?


頭のかたちがゆがんだまま成長すると、見た目のコンプレックスになったり、髪型やファッションに苦労したりと、お子さま本人の悩みの種になってしまう可能性があります。
生活に必要な眼鏡や安全のためのヘルメットがうまく装着できずに困っている声も聞きます。

また、以前は成長発達遅延や運動機能障害の原因とはならないとされてきましたが、海外では神経・運動の発達に遅れを伴うという報告が複数あり、発達遅延との関連性が注目されています。
※Hutchison BL, Thompson JM, Mitchell EA. Determinants of nonsynostotic plagiocephaly: a case-control study. Pediatrics. 2003;112(4). Collett B, Breiger D, King D, Cunningham M, Speltz M. Neurodevelopmental implications of “deformational” plagiocephaly. J Dev Behav Pediatr. 2005;26(5):379–389

頭のかたちが気になったら専門家に直接相談しよう


ここまでで、遺伝で頭のかたちがゆがむことはむしろ稀で、病気が明らかでない場合の頭のかたちのゆがみの原因は他に沢山あることをご理解いただけたと思います。

赤ちゃんの頭のゆがみの原因について、自己流で調べたり身近な人に聞いたりしたときに、「原因は遺伝だから仕方がない」「治す方法はない」と言われた方もいらっしゃるかもしれませんが、大切なお子さまの将来に関わることですから、専門知識やしっかりとしたデータに基づかない自己判断はおすすめしません。
赤ちゃんの頭のかたちが気になった場合は、迷わず専門家へ直接相談しましょう。

まとめ|頭のかたちは遺伝が原因と様子見しすぎないようにしましょう


我が子の頭のかたちのゆがみに気づいたとき、親や親戚からの遺伝のせいではないかと申し訳なさを感じたり、遺伝なら対処の方法はないと諦めたりする人もいるかと思います。

また、遺伝だから仕方がないと放置しているかもしれません。

しかし、頭のかたちのゆがみの原因はさまざまで、遺伝ではなく向き癖などの外部圧力である場合が多いのです。赤ちゃんの頭が柔らかいうちに対処することで、様々なリスクを下げられるかもしれません。
我が子の頭のゆがみに気づいたら、遺伝だからと放置せず、早めに頭のかたちの専門医へ直接相談することをおすすめします