頭のゆがみ

【医師監修】長頭症とは?頭が縦に長くなる原因や特徴、対策方法について


「我が子の頭を横から見たら、なんとなく長い気がする…。」それは、もしかすると「長頭症」と呼ばれる頭のかたちのゆがみかもしれません。

赤ちゃんの頭のかたちのゆがみは、これまで「放っておけば自然に治るよ」「様子を見よう」という声が多く聞かれてきましたが、最近は積極的に治療を行うようになりつつあります。

生まれたばかりの赤ちゃんの頭はやわらかくて変形しやすいため、早期に対策をすれば頭のかたちのゆがみを予防できたり、改善を目指せます。

その一方で、場合によっては早急に治療が必要なケースもあります。

そこで本記事では、長頭症の特徴や原因、知っておきたいリスクや対策について解説します。

中張 惇子 先生

2013年、帝京大学医学部卒業、自治医科大学附属さいたま医療センターで初期臨床研修を終了後、2015年、同センター小児科に入局。同センター、自治医科大学とちぎ子ども医療センターで小児科専攻医として研修。2019年〜周産期科新生児部門 病院助教。2019年〜2020年、聖霊浜松病院 新生児科で専門研修を経て2021年周産期新生児専門医取得。2021年10月から自治医科大学附属さいたま医療センター 乳児頭のかたち外来開設から頭蓋変形の診療に携わり、現在に至る。

長頭症とは?


長頭症(ちょうとうしょう)は頭のかたちの一種で、頭の前後幅が横幅に比べて異常に長くなっている状態を指します。

頭のかたちを上からや横から見ると、頭が明らかに長くなっていることが特徴です。

赤ちゃんの長頭症の原因は?


赤ちゃんが長頭症になってしまう原因は、主に3つあります。

横を向いて寝る癖がついている


長頭症になりやすい原因のひとつが、赤ちゃんの寝かせ方です。

長頭症になってしまう赤ちゃんの多くは、長い時間横向きで寝ている傾向にあります。

生まれて数ヶ月の間、赤ちゃんの頭蓋骨はとてもやわらかく、一定方向に圧力がかかり続けることで容易に変形してしまいます。

そのため、横向きで寝ているとその部分が平らになり、頭が細長くなってしまうのです。

例えば、NICU(新生児集中治療室)で長期間治療を受けている赤ちゃんは、長頭症になりやすいといえます。

これは、NICUでの処置の関係で横向きに寝かされていることが多いためです。

出産時に逆子や吸引分娩だった



母親の子宮の中や、出産時の環境によっても長頭症となる場合があります。

とくに逆子の赤ちゃんは、頭が伸びたような状態で出てくることが多く、長頭症になりやすいとされています。

吸引分娩の場合も、赤ちゃんの頭に吸着カップを付けて引き出すため長頭症になりやすいと考えられます。

頭蓋骨が変形する病気


稀にではありますが、病気が原因となっている場合もあります。

頭蓋骨のつなぎ目が何らかの原因で早くつながってしまう頭蓋骨縫合早期癒合症(ずがいこつほうごうそうきゆごうしょう)という病気です。

この病気の場合は、頭蓋骨のつなぎ目が通常よりも早くにくっついてしまい骨の成長が阻害されるため、頭蓋骨が変形してしまいます。

長頭症は、この頭蓋骨縫合早期癒合症の一種の、矢状縫合早期癒合症(しじょうほうごうそうきゆごうしょう)で現れる頭のかたちに似ているのです。

頭蓋骨が部分的にくっついていると、脳の成長に合わせて頭蓋骨が正常に拡大していくことができません。

それにより、成長すべき脳の発達が阻害されてしまう可能性があり、場合によっては早急に治療が必要なケースもあります。

長頭症は自然に治る?知っておきたいリスクについて


赤ちゃんの頭のゆがみに対して、「自然に治るよ」や「赤ちゃんの頭のかたちはよく変わるものだよ」と言われることもあるかもしれません。

しかし、頭のゆがみをそのままにしていると、次のようなリスクにつながる可能性があります。

頭のかたちがゆがんだままになってしまう


赤ちゃんの頭蓋骨は、生後まもなくはとてもやわらかく、かたちが変わりやすいのですが、成長するにつれて硬くなり、かたちが定まってきます。

次第に気にならない程度に改善するケースもありますが、重症度によっては、ゆがみをそのままにしておくと、頭はゆがんだかたちのままで硬くなってしまうことがあります。

赤ちゃんの頃は気にならなくても、頭のかたちが原因で好きな髪型にできなかったり、かぶりたい帽子が合わなかったり、といったことが起こる可能性もあります。

発達に影響が出てしまう可能性も


寝かせ方や出産前後の環境による頭の歪みの場合は、基本的に脳の成長や発達には影響しないと考えられています。

矢状縫合早期癒合症が原因となっている場合は、頭蓋骨のつなぎ目が早期にくっついてしまうので、その部分では脳の成長に合わせて頭蓋骨が成長していきません。

赤ちゃんの脳は生まれてから約6ヶ月で2倍もの大きさに成長しますが、矢状縫合早期癒合症によって脳の成長が妨げられる可能性があります。

脳の成長が妨げられることによって、運動発達や成長発達に影響が出る可能性も否定できません。

「長頭症かも」と思ったらどうすればいい?


赤ちゃんの頭のかたちが気になったら、まずはご家庭で簡単な対策を行ってみましょう。

赤ちゃんの頭のかたちを自然な状態で保ち、一定方向に圧力がかかり続けないように注意してあげるだけでも、十分な対策の一つです。

頭のかたちがやわらかいうちに対策する


頭のかたちのゆがみは、頭蓋骨がやわらかいうちに対策をとることが重要です。

ご家庭でも、長時間同じ方向で寝かせないようにする、授乳時や抱っこの際もタオルや枕を上手に使って赤ちゃんの姿勢をサポートしてあげるなど、体位変換を行うことでゆがみの予防・改善につながります。

例えば、横向きで寝る癖がついていたら、バスタオルを使って向き癖を治す方法があります。

赤ちゃんを寝かせるとき、折りたたんでぐるぐる巻きにしたバスタオルを、赤ちゃんを向かせたい方向と反対側の背中から体の下へ入れ込み、赤ちゃんの寝る向きを支えてあげることで向き癖を修正します。

ただし、赤ちゃんに過度な負担がかからないよう、2時間程度を目安に姿勢を変えてあげるようにしましょう。

医療機関へ相談する


できる対策を取りつつ、それでも赤ちゃんの頭のかたちが気になると思ったら、まずは医療機関や専門医に相談することをおすすめします。

医療機関できちんと検査を受けることで、頭のゆがみの原因や対策についてのアドバイスや、必要に応じた治療を受けることができます。

医療機関では、頭のゆがみの原因が病気によるものなのか、外部からの圧力によるものかを診断してもらうことができます。

頭のゆがみの原因が頭蓋骨縫合早期癒合症だった場合、さまざまな部位に影響が及ぶことから早期の治療が必要となり、手術は変形が広範囲に広がる前の1歳以下の段階でおこなわれます。

頭のゆがみの原因が病気であっても、外部からの圧力によるものであっても、赤ちゃんの頭蓋骨がやわらかいうちに対策・治療を始めることが重要です。

また、頭のゆがみを診てくれる医療機関では、ゆがみの程度や赤ちゃんの頭の成長にあわせてアドバイスをもらうことができます。

頭のゆがみはヘルメット治療も検討してみましょう


ヘルメット治療は、矯正用ヘルメットをかぶることでやわらかい頭を保護しつつ、すでに変形して平らになってしまった部分の成長を促し、自然な頭のかたちへと近づけていくものです。

赤ちゃんの頭蓋骨がやわらかい生後6ヶ月頃までにヘルメット治療を開始すると、効果が得られやすいとされています。

このヘルメット治療に用いる矯正用ヘルメットは、個々の赤ちゃんの頭のかたちに合わせてオーダーメイドで作成します。

最初は数時間からヘルメットの着用を始め、経過を見ながら着用時間を長くしていき、最終的にはお風呂の時間を除き寝ている間もずっとヘルメットを着用します。

ヘルメット治療の期間は、約6ヶ月間程度です。

また、現時点の日本におけるヘルメット治療は保険適応外であるため、どうしても治療にかかる必要は高くなってしまいます。

医療機関や使用するヘルメットのメーカーなどでも異なりますが、ヘルメット治療の総額は約40~60万円(税込)です。

まとめ|長頭症かも?と思ったら早めに相談しよう


長頭症は「自然に治る」ものではなく、場合によっては適切な治療が必要です。

矢状縫合早期癒合症という病気によって長頭症となっている場合もありますし、外部からの圧力が原因となっている場合も、早めに対策をとることが重要です。

赤ちゃんの頭のかたちに少しでも不安を感じたら、早めに頭のゆがみを診てくれる医療機関に相談してください。